「友だちから好かれる子…というと、おもしろい子、明るい子、楽しい子、思いやりのある子、スポーツが得意な子、見た目がいい子…いろいろ思い浮かぶのでは? でも、このなかで本当に大切なのはひとつ…思いやりのある子です」
そう話すのは、教育評論家の親野智可等先生。いろいろな魅力を持ち合わせている子でも、思いやりのない自己中心的な子は、やがて友だちが離れていくという。
「思いやりのある好かれる子は、他者信頼感がある子なんです。例えば、学校の廊下で子ども同士がぶつかったとき、“あっ、ごめんね、大丈夫?”って言える。たとえ自分が悪くなかったとしても言えるんですね。何かの取り合いになっても、どうぞ! と譲ることができるし、誰かが困っていたら、助けてやれるんです」
逆に、友だちから嫌われてしまう自己中心的な子は、他者不信感に満ちているという。
「ぶつかれば、 “何お前ぶつかってきたんだ、やる気か?”ってなってしまう。何かの取り合いになっても絶対に譲らない。誰かが困っていても“自分が悪いんでしょ!”となる。つまり、相手に対して常に不信感があるから、被害妄想的になり、“自分を守らなきゃ”と、攻撃的になってしまうんです」(親野先生 以下同)
では、なぜこのような違いが生まれてしまうのでしょうか? その原因の多くは家庭環境にあるといいます。
「人間関係の基礎、第一歩は親子関係です。親に対する不信感、つまり親の愛情を実感できていない、愛で満たされていない子は、兄弟、友だち、先生、社会に対して不信感を抱いてしまい、不信というものを土台にその後の人間関係を作るようになってしまうのです」
では、人から好かれる他者信頼感に満ちた子に育てるには、どうしたらいいのでしょうか?
「親の愛情でわが子の心を満たしてあげることです。思いやりのある子に育てたいなら、親がわが子を思いやりながら育ててください。それが唯一の方法なのです。お子さんは、親にしてもらったのと同じことを、人にするようになるからです。そう言うと、親御さんはみな愛情を注いでいるとおっしゃるでしょう。しかし、日ごろお子さんが親の愛情を疑ってしまうような否定的な言葉、とがめる言葉を知らず知らずのうちに浴びせて追い込んでしまっていることが実はとても多いのです。どうかいま一度、日々の言動を振り返ってみてください」
好かれる子に育てるためには、まず親子関係から。自分が愛されているという安心感こそが、人を思いやることの源になるのです。
(構成・文/横田裕美子)