「年齢によって子どもの成熟度が違いますから、対処法も違ってきます。対処の仕方を間違えてしまうと、かえって反発を招きエスカレートしてしまうケースもあるので、間違った対応をしないように気をつけなければなりません」(小俣先生 以下同)
では、未就学児のわが子がお友だちのモノを盗んでしまったら、どう対処すればいいのでしょうか?
「未就学児が幼稚園でお友だちのモノを盗んでしまうなどのケースの場合は、それほど深刻に考える必要はありません。持っていないモノがほしい、友だちと関わるきっかけがほしい…などが動機で、まだ遵法意識も低く悪気もない時期です。決して感情的に叱らず、きちんと“人のモノを盗むことはけないよ”という善悪について話して聞かせ、先生などにも話してもらうなどすれば問題はありません」
小学校以降は、“万引きはいけないこと”とわかっていてやっているので、きちんと親として叱って、その後エスカレートしないようにうまく導いていかなければなりません。
「それでも、小学校低学年くらいまでは、まだ素直ですし、遵法意識も高い時期なので、環境に深刻な問題を抱えている子でなければ、検挙・補導されたり親に真剣に叱られればおさまるケースがほとんどです」
思春期以降は、子どものほうも精神的に成熟してくるので、親としての毅然とした対応が何より重要になってくるという。
「まず大事なのは、決して親があたふたせず、やってしまったことは事実としてしっかり受け止めます。そして、これはあくまでも一過性のものであって、わが子を信頼していることを大前提として、いけないことはいけない! 次は二度とやらせない! やっちゃいけない! と親身になって叱り、今後どうしていったらいいかとことん話し合います」
次のような叱り方はもっともまずい対応だそう。
「ショックのあまり、親御さんがあたふたしてしまい、“世間に顔向けできないわ”とか“お父さんに恥かかせて!”とか、“もうあなたなんて知らない!”などと、ネガティブな発言は決してしてはいけません。こんなことを言ってしまうとお子さんは“オレ(私)より世間が大事なんだ”“父親のほうが大事なんだ”と、親を歪んで見るようになり、信頼関係は完全に崩壊し、さらに万引きもエスカレートしかねません」
親子の信頼関係さえしっかりしていれば、たとえ一過性の過ちがあったとしても、常習化しないケースがほとんどだという。
「逆に、親子の信頼関係、親への愛着がない子は、欲求不満耐性=我慢する力も育たないばかりか、精神的飢餓感を埋めようと万引きを繰り返すなど、歯止めがきかなくなり、どんどんエスカレートする可能性も。そこまで悪化してしまう前に、どうか、お子さんのあるがままを受け止め、愛し、日ごろから信頼関係を築いてください。その土台さえあれば、どんな多感な時期も共に乗り越えていけるのです」
何が起ころうとも、親が常に信じて味方でいてくれる。その安心感さえあれば、子どもは時につまづきながらも、進むべき道をしっかり歩んでいけるのかもしれません。
(構成・文/横田裕美子)