●指導者の性的嗜好を見抜くことは不可能なのか?
「SSHがなぜ起きるか…それは、教員と生徒の間にある“力関係”が関与しています。担任教師と生徒であれば、成績や内申書に関わる、また部活であれば、顧問は“選手や代表を選ぶ”という立場であり自ずと力関係が生じています。子どもにとって学校は大切な場所であり、1日の大半を過ごすため、安心安全でなければならない。生徒は、なかなか先生に嫌ということができません。そしてセクハラ被害に遭った子どもたちは、そんな自分を恥ずかしく思い、親に打ち明けることができないのです。“親に心配をかけたくない”“親に責められるかも…”という思考が働き、表面化しづらくなるのが現状です」(亀井氏 以下同)
教師による猥褻事件が起きる度、まず親が感じるのは、「なぜこんな教師が採用されるのか?」という疑問。指導者を選ぶ際、性的嗜好を見抜くことは不可能なのか?
「小児性愛者に関しては、何とか見抜ける方法がないものかと、私たちも研究したり分析したり、日々努力をしていますが、心理テストで見抜くことはもちろん、今の教員採用段階では難しいと感じています。だからこそ、日頃から保護者が子どもとのコミュニケーションを深め、“何かおかしい”と些細な変化に気づくことが大切なのです。セクハラのみならずいじめや体罰も同様です」
もしもわが子が被害にあったら…親が知るべき子のサインや、対処法はあるのだろうか。
「学校や習い事など、楽しみにしていたことを急に嫌がるようになったり、親と目を合わせない、口数が少なくなる、帰宅時間が遅くなるなどは要注意です。性被害は外傷がないため、外見からではわかりにくい。子どもの変化に気が付いた段階で根掘り葉掘り聞くと、かえって隠してしまうこともあるので、“何かあればいつでも聴くからね。話したくなったらいつでも話してね”と声かけして下さい。日頃から子どもとたくさん会話をして、気にかけている保護者であれば、子どもの些細な変化に必ず気づけるはずです」
「支援学級に通う生徒や、スポーツ強豪校の生徒に被害が多い」と語る亀井氏。
「障がいのある子どもたちや小学校低学年の子どもたちの場合、自分が性的被害に遭っていることすら理解できないケースがあります。また、スポーツ強豪校では、顧問をカリスマと神化し、保護者も崇拝してしまう傾向にある。もし子どもが被害に遭っても、“あの先生に限ってそんなことをするはずがない!”と親が顧問の肩を持つようになってしまうのです。そうなると、子どもはますますセクハラを我慢し、“親に受け止めてもらえなかった”と大人を信じなくなってしまいます」
学校、塾、習い事…真面目で熱心な先生たちはもちろん存在する。だが一方で、教育現場に聖域などなく、先生も普通の人であることを自覚しておかねばならない。どんなに指導者を信用しても、大切なわが子を任せきりにせず、常に関心を持ち教育に関与する…それが親の務めではないだろうか。
(取材・文/吉富慶子)