「ひきこもり主婦が増えているというより、顕在化してきたのだと思います」と話すのは、『大人のひきこもり』(講談社)著者でジャーナリストの池上正樹さん。
「ひきこもりというと、テレビドラマなどの影響で、カーテンも閉めた暗い部屋から出てこないイメージがあると思います。しかし、そうしたひきこもり像は実態とかけ離れており、自分が本質的にはひきこもりと変わらないことに気づき始めた主婦が多いのです」(池上さん 以下同)
小さな子を持つ世代であれば、自由に外出できなくなることも多いけど、どの程度を「ひきこもり」と言うの?
「家族以外との関係性が途絶え、社会的に孤立してしまうこと。国の調査では1カ月としていますが、それはあくまで調査用・支援用の線引きであって、本質的に期間はあまり関係していません」
公的な調査では、ひきこもりの7割が男性という結果が出ているそうだが、自分の状態に気づいていないだけという女性も多いそう。
「ひきこもり状態の主婦についての記事を1本紹介したら、それ以降、『実は私も』というメールが多数きています」
●ひきこもり主婦になる3つのきっかけ
「ひきこもり主婦」になるきっかけは何なのか。
「ひとつは、それまで社会的に活動していた人が、夫や家の都合で専業主婦になり、社会との接点がなくなるパターン。“妻は夫の所有物”という価値観が日本にはいまだに根強く残っていますから」
結婚・出産を機に、これまで築いてきたものを捨てて、夫のために尽くさなければいけなくなった女性、あるいは夫の転勤や海外駐在などで知り合いのいない場所に住み、孤立してしまう女性も少なくないそう。
「もうひとつは、子どもの頃から虐待を受けるなど、家庭のなかで心の傷を負い、親や周囲から口止めされてきたケース。何かの拍子で心の傷を思い出し、修復できず、関係性を閉ざしてしまい、理想の主婦は演じられるけれど、夫がいないときは寝たきりになることもあります」
さらに、公園デビューに失敗し、外に出られなくなるなど、ママ友とのコミュニティで疎外感を感じ、ひきこもりになるケースもあるそう。
結婚・出産、転勤などの環境の変化に適応し、友だちを作って楽しく関係を築ける人もたくさんいるが、真面目な人ほどひきこもりやすい傾向があるという。
「自分ももしかしてひきこもり?」と気になる人は、まず家族以外の人との関係性があるかどうか、振り返ってみては?
(田幸和歌子+ノオト)