子どもを伸ばす「セルフコントロール」ってなに?

第1回 セルフコントロールができる子どもに育てるには?
自分の行動や思考を調整する力は、“セルフコントロール”と呼ばれ、頭のよさとは別の“非認知的”な能力として知られています。最近の研究では、このセルフコントロールの差が学力や生涯年収、健康の差につながってくることが分かってきました。となれば、ぜひ子どもにもセルフコントロールのスキルを身につけさせたいところ。そこで、セルフコントロールについて研究をしている、大阪大学社会経済研究所の池田新介教授に話を聞きました。

●セルフコントロールができる人は何が違う?

まずは、そもそもセルフコントロールができる人とできない人とでは何が違うのでしょうか?

「分かりやすくいえば、理性を優先させて行動するかどうかの違いです。これは先天的なものもありますし、教育や環境など後天的な影響によっても変わります。セルフコントロールは脳の前頭葉などによる“実行機能”に関連しているんですが、その能力は遺伝的な素因に影響されているという研究がある一方、大人になってからも伸ばすことができると言われており、訓練によって鍛えることもできるんです」(池田教授、以下同)

●なぜセルフコントロールが大事なの?

では、子どものうちからセルフコントロールの力を磨くと、どのようなメリットがあるのでしょうか?

「人間は常に、『現在の利益』と『将来の利益』、どちらを取るかという葛藤を抱きながら生活しています。たとえば、子どもにとって『遊びたい』という願望は現在の利益です。対して『勉強をしなければいけない』は、将来の利益につながるものです。セルフコントロールの力が身についていれば、目先の遊びたい気持ちをセーブし『勉強をすることで学力がつき、テストの点数が伸びる』という将来の利益を優先させることができるわけです。いまの社会ではだいたいのことが将来の利益によってもたらされる事の方がより大きな価値を持つため、セルフコントロールが大事だとされるのです」

子どもを伸ばす「セルフコントロール」ってなに?

また、子ども時代のセルフコントロール能力が高いほど、成人後の健康度や社会的地は高く、困窮度は低くなるというデータもあるようです。セルフコントロールが必要な場面はたくさんありますが、まずは子どもにその大切さを伝えるのが親の役割かもしれません。

(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)