セルフコントロールはこうやって身に着く

第3回 セルフコントロールができる子どもに育てるには?
「意志あるところに道は開ける」という格言がありますが、意志の強さは学力の向上や、健康の維持にも大きく関わるもの。本能を上回る理性を発揮する力は、セルフコントロール力と呼ばれ、一流のアスリートや実業家の多くは、この能力に優れているといわれます。

「じつは、セルフコントロール力は後天的に伸ばすことができるんです」と話すのは、大阪大学社会経済研究所の池田新介教授。そこで、我が子にセルフコントロール力を身に着けさせるために、親ができることを4つ教えてもらいました。

●習慣化を意識させる

「たとえば毎日の勉強ひとつとっても『習慣化』を意識させることが重要です。習慣化によって脳内の伝達物質の行き来がスムーズになり、感情的な葛藤なく理性でコントロールできるようになるからです。たとえば、まずは5分でもいいから毎日机に向かうように促すなど、早いうちから行動の習慣化が身に着くようサポートしてあげましょう。なお、習慣は守れば守るほど強固なものになりますが、一度でも破ってしまうと脆くも崩れ去ってしまいますので、辛抱強く意識づけを行うことが重要になります」(池田教授、以下同)

●「遠くの利益」を意識させる

「子どもはどうしても目の前にある楽しいことを優先してしまい、長期的な展望を描くことができません。そのため、まずは親が子どもにとって何が利益になるのかを見定め、正しい方向に導くことが大切です。たとえば、近くの利益と遠くの利益のふたつがあった場合、間近に小さな利益があると、子どもはそこばかりに注意がいってしまう。そうではなくて、遠く離れたところに大きな利益があることを親が教えて、注意喚起をしてあげることは、子どもにとってセルフコントロールの必要性を認識することにつながります」

●ご褒美は安易に与えない

「たとえば、ちょっとしたお小遣いや、お菓子といったご褒美は生産的じゃないんですね。セルフコントロールを働かせるうえでご褒美は大事なのですが、一番のご褒美は達成感なんです。そのため、ちょっとしたご褒美をあげてしまうとかえって努力をしなくなり、最終的には『それくらいのご褒美ならやらない』となってしまいます。なぜなら、セルフコントロールするパワーを使って得られる利益よりも、使わないで得られる利益の方が大きいと判断するからです」

●セルフコントロールによってもたらされる利益を経験させる

「最初からセルフコントロールの大切さを教えるのは無理なので、経験を積ませることが大事です。たとえば、スポーツや勉強、または世界文学全集を読ませるなど、セルフコントロールによって何かをなしえ、それにより利益を得る実感を覚えさせましょう。いわば練習試合みたいなものです。そのなかで、本人もセルフコントロールで得られるものが、どれくらいのものかというのを自覚してくると思います」

セルフコントロールはこうやって身に着く

セルフコントロール力の習得は、長期的な視点で取り組ませることが大事。子どもの将来を左右しかねない能力だけに、今日からでも実践していきたいところですね。

(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)