「当院では、ここ10年間の性感染症(STI: Sexually Transmitted Infectionの略)の総患者数は横ばいですが、疾病内容が大きく変わりつつあります。男性の尿道炎、女性の膣炎を見ると、2005年から2013年にかけて淋菌感染症が全世代で増えています。性器クラミジア感染症は全体としてやや減っているものの、30代前半までの世代では減っていません」(澤村先生 以下同)
実は注意すべきことは、過去10年において、30代前半までの世代人口が約30%減っているということだそう。
「人口が減っているのに、患者数が減っていないということは、クラミジアの有病率は増えていることになりますし、実数が増えている淋菌は非常に増えていることになります」
性感染症は基本的に性行為からしかうつらない。増えているのは、複数のパートナーがいる人の増加なども考えられるのだろう。
また、近年は若い女性に梅毒が増えているという報道もときどき目にする。
「梅毒は2010年には全国の女性患者が124人だったところ、昨年は600人弱になっています。もともとは男性同士間の性行為による感染が数多く見られたものですが、最近では女性の感染者が爆発的に増えているのです」
●性感染症は、性体験がある人は誰でもかかる可能性アリ
「性感染症」とは、性行為などで感染する病気の総称で、その多くは性交や口と性器の接触などが原因となる。20代~30代前半など、若いママ世代にも増えていることを考えると、不安になる人も多いだろう。
おもな症状には、どんなものがあるのだろうか。
「性器のかゆみや、腫れ、おりものが増えることや、性交痛、出血などです。ただし、自覚症状がある人は感染者の半数程度なんですよ」
自覚症状もないとなると、ますます不安だが、澤村先生は次のように話す。
「現在では『性病』という言葉は死語になっています。かつては性病予防法に記載された梅毒、淋病、性器クラミジアなどを総称して『性病』と呼んでいましたが、その法律は2000年に廃止されました。それは、性行為の経験がある人なら誰がかかってもおかしくない病気だからです」
そのため、パートナーがいる人は、定期検診を受けることが大切だそう。とはいえ、どうしても性感染症の検査はハードルが高いが…。
「今は簡易検査キットもありますので、上手に利用すると良いでしょう。ただし、確実ではないので、気になる症状がある人は、こわがらずに専門医に相談しましょう」
性感染症の多くは現在、抗生物質などで治療も難しくないそう。気になる人は早めの検査を。
(田幸和歌子+ノオト)