性感染症の気になる症状と治療法

第2回 ママの性病が増えてるってホント?
自覚症状がなく感染している人も多数いるという「性感染症(STI: Sexually Transmitted Infection)」。具体的にはどんな病気があるの?

「新宿さくらクリニック」の澤村正之院長はおもな症状と、考えられる病気を以下に挙げてくれた(ただし、当てはまらない場合もある)。

おりものの異常……クラミジア、淋菌、トリコモナス、カンジダなどによる膣炎

性器周辺のブツブツ、水泡……尖圭コンジローマ、性器ヘルペスなど

性器周辺のかゆみ……クラミジア、淋菌、トリコモナス、カンジダなどによる膣炎

倦怠感や微熱……B型肝炎、HIV感染

「クラミジアや淋菌、マイコプラズマ、梅毒などは『細菌の性感染症』で、抗生物質が有効です。クラミジアは感染しても半数以上は症状が出ませんし、淋菌はほとんど症状がありません」

ちなみに、膣炎の原因として意外と多いのが「マイコプラズマ」で、これは(1)毒性のあるもの、(2)一部に中等度の毒性があるもの、(3)毒性のないもの2種、計4種の総称だそう。

「実は若い世代の約半数が正常でも4種のどれかは持っているといわれます。発症するかどうかは免疫力や抵抗力によります」

また、尿路系マイコプラズマと肺炎マイコプラズマはまったく別モノであり、膣からマイコプラズマが出ても、お子さんが肺炎になるわけではないという。

性感染症の気になる症状と治療法

●ウイルス性性感染症は潜伏期間が非常に長い

ところで、注意したいのは、「細菌性の性感染症」と「ウイルス性性感染症」とは性質が異なることだそう。

「現在、ウイルス性性感染症が増えています。理由ははっきりとわかっていませんが、細菌性の性感染症との大きな違いは、抗生物質が効かないことと、潜伏期間が非常に長いこと。大多数が感染しても発症せず、何年も昔に感染した症状が突然出てくることがあるのです」

ウイルス性性感染症には、「性器ヘルペス」や「尖圭コンジローマ」などがある。特徴は以下の通り。

性器ヘルペス……慢性的で、抵抗力が落ちると出る。塗り薬は対症療法であり、飲み薬が必要。出産時に再発していると帝王切開になるが、海外ではその対策も進んでいる。最近は薬を最長1年間飲むと再発しにくくなる「再発抑制療法」も。

尖圭コンジローマ……全女性の8割が持っているとされるが、発症は3%程度。治療は手術や液体窒素、最近は再発率が非常に低い「免疫賦活療法」なども。性経験のない女性でも起こりうる。0.1%の人が子宮頸がんになるが、がん化するまでに10年以上かかるので、定期的な検診で未然に予防できる。

「性感染症はコントロールできる時代」と澤村先生はいう。気になる症状がある人は、恐れず受診を。
(田幸和歌子+ノオト)

お話をお聞きした人

澤村正之
澤村正之
新宿さくらクリニック 院長
日本性感染症学会代議員、日本泌尿器科学会専門医・指導医。北里大学医学部非常勤講師(兼任)、関東尿路性器感染症懇談会世話人。性感染症に関する執筆、講演多数。
日本性感染症学会代議員、日本泌尿器科学会専門医・指導医。北里大学医学部非常勤講師(兼任)、関東尿路性器感染症懇談会世話人。性感染症に関する執筆、講演多数。