いい子症候群のまま大人になると新型うつになる!?関係性を教授が語る

第3回 わが子がいい子症候群にならないために
近年増えているという「いい子症候群」。要求に応えないと親が不機嫌になるため、子どもがびくついて従順になってしまっている状態をいう。教育カウンセラーの諸富祥彦先生によると、その状態のまま成長すると、さまざまな弊害が起こるそうだ。

「例えば友人と外食に行ったときに『何を食べたい?』と聞かれても、自分が何を食べたいのか分からず、他者の好みや判断に任せてしまいます。子どものときにも親から聞かれているのですが、気に入られたいがために『親に喜ばれるメニューはなにか?』と判断します。その基準が変わらず身に付いてしまっているのです」(諸富祥彦先生 以下同)

では、影響を与えた親がどう変わると、子どもは“いい子”から解放されるの?

「子どもを“いい子”から解放するためには、親自身の気持ちを伝え、子どもが自分の感情を出しやすい親子関係に変えることが必要です。具体的には『私(ママ)はこう思っているよ。○○はどう思う?』と、親と子の意見は別のものであることをお互いが分かるようにします。そして子どもがつらいときには、受け止めてあげましょう」

母親に怒られている子ども

●いい子症候群は、新型うつとも関係がある?

いい子症候群は、最近問題になっている新型うつとの関連性も指摘されている。新型うつとは、就職してもすぐ辞めてしまう、ミスを上司のせいにするなどの問題行動が起きる状態。一見違う症状のように見えるが、どのように関連しているの?

「自分を責めるいい子症候群と、目上の人を攻める新型うつは、一見逆の行動にも思えます。ですが自分の存在価値を認めるために他者を必要とする内面は同じなのです」

新型うつの場合、間違いを指摘されるなど否定されることで自分の存在価値が揺らぐため、上司に向かって『悪いのはお前だ』とキレてしまう。責任の所在が自分ではなく、他者にずれてしまうのだそうだ。

そのまま大人になると、さまざまな弊害が起きるいい子症候群。親子関係で受けた影響が、生涯続いてしまうこともある。親の行動で子どもの自主性を奪っていないか、冷静に見直してみよう。
(ノオト+石水典子)

お話をお聞きした人

諸富祥彦先生
諸富祥彦先生
明治大学文学部教授
臨床心理士、上級教育カウンセラー、学会認定カウンセラー。『男の子の育てかた』『女の子の育てかた』『一人っ子の育てかた』(WAVE出版)他、著書多数。TV、ラジオ出演多数。
臨床心理士、上級教育カウンセラー、学会認定カウンセラー。『男の子の育てかた』『女の子の育てかた』『一人っ子の育てかた』(WAVE出版)他、著書多数。TV、ラジオ出演多数。