子どもの職業観の広がりを阻む親のエゴとは?

第3回 成功者は実践してる? 子どもの職業観を養う方法は?
子どもは将来に、たくさんの可能性を秘めています。どのような仕事に就きたいかは成長の課程で本人が模索するものですが、「こうなってほしい」という親の思いが強すぎると、自発的な将来像を描けなくなってしまうかもしれません。

では、価値観の押しつけにより子どもの選択肢を狭めてしまわないよう、親としてどう接するべきなのでしょうか。気を付けるべき言動や態度について、子どもの職業観育成に詳しい学び総合研究所代表の西尾竜一さんに話を聞きました。

●特定の職業に対して否定的にならない

親の価値観の押しつけは、子どもの成長に及ぼす影響が大きいと西尾さん。とくにネガティブなワードには気をつけた方がいいといいます。

「たとえば、『こうならないと苦労するよ』とか『大変なことになるよ』という発言は、ともすれば子どもが働くことに興味を失ってしまうことにもなりかねません。自分で経験し、模索する前に選択肢がなくなってしまうのです。子どもにとって良かれと思っても、一方的に否定しないことが大事だと思います」(西尾さん、以下同)

何かに対して否定的な考えを強調することで、仕事に対するイメージも固定化されてしまい、そもそも選択肢を狭めてしまうそう。とくに、子どもにとって父親である夫の否定をしてはいけないと指摘します。

「よくあるパターンとして、お母さんが『お父さんはこんなことしかできなくて』とか『お父さんは小さい会社だから苦労している。そうならないためにも、あなたは大きな会社に行きなさい』というように、身近な存在であるお父さんを否定して、努力を促すことがあります。もちろん、社会のことを知っている親だからこそ、レールを敷いてあげてもいいのですが、物事は一面では語れないことがほとんどです。すごく苦労して有名大学を卒業して、大企業に勤めたとしても大変なこともあります」

子どもの職業観の広がりを阻む親のエゴとは?

●親だからこそ子どもに寄り添ったアドバイスを

偏った見方を提示するのではなく、本当に伝えるべきは仕事にはさまざまな側面があるということ。また、大袈裟な言葉で背中を押すのではなく、子どもと向かい合い、将来について語ることを心掛けるべきだといいます。

「『必ず夢は叶う』とか『努力は報われる』といった話や、学校の先生のように客観的な話ではなく、子どもに寄り添って話をすることが大事です。たとえば、絵を描くのが上手だとしたら、『絵を描くことにそこまで夢中になれるなら、デザイナーという職業もあるんだよ』というように、リアルな仕事に紐付けて話してあげてください。それにより、子どもは具体的な仕事に対するイメージを持つことができるのです」

親だからこそ子どもを想い、輝かしい未来を手に入れて欲しいと考えるもの。しかし、子どもが自発的に将来像を見い出すことができれば、仕事で少々つらいことがあったとしても高いモチベーションを保てるはず。一方的な価値観を押しつけず、子どもの個性をフックにさりげなく職業観に結びつけることが大事なのかもしれません。

(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

西尾 竜一
西尾 竜一
学び総合研究所 代表
専門は仕事観育成教育。学校や塾における仕事観の教育プログラム開発をすすめる。著書に「お仕事未来」「仕事の現場」など。
専門は仕事観育成教育。学校や塾における仕事観の教育プログラム開発をすすめる。著書に「お仕事未来」「仕事の現場」など。