和解とは?タイミングやメリット・デメリットを弁護士が解説

和解とは?タイミングやメリット・デメリットを弁護士が解説

裁判での和解に対してどのようなイメージをおもちでしょうか?

「円満に問題が解決するならよい」「和解は妥協だからするべきではない」など人によって考えが異なるかもしれません。裁判といえば判決が出ると思われがちですが、実は和解で解決する事件も非常に多いのです。

そこで今回は

  • 和解とは?
  • 和解勧告のタイミング
  • 和解のメリット・デメリット

などについて解説します。

この記事が、裁判での和解を考えている方のための手助けとなれば幸いです。

1、和解とは?

和解とは、当事者が互いに譲歩をして、争いをやめると約束することです。和解には「裁判外の和解」と「裁判上の和解」とがあります。

(1)裁判外の和解(和解契約)

裁判外の和解とは、裁判をせずに当事者が互いに譲歩して争いをやめるという契約をすることです。

例えば、「貸した100万円を返せ」「借りた覚えはないから1円たりとも返さない」という争いがあった場合に、話し合いで「50万円で手を打つ」と合意したとします。ここでは、お互いに譲歩して争いをやめると約束しているため、裁判外の和解が成立しているといえます。

和解が成立すると、争いになった点について後から蒸し返すことはできません。これを和解の確定効といいます。上の例でいうと、実はお金の貸し借りがなかったと後から判明しても、「和解はなかったことにして一切払わない」との主張は基本的には許されないのです。そのため、和解する際には慎重さが求められます。

なお、似た言葉に「示談」があります。示談は一方だけが譲歩した場合も含む点が和解と異なります。

(2)裁判上の和解

裁判上の和解とは、裁判所が手続きに関わる和解です。裁判上の和解は「訴え提起前の和解」と「訴訟上の和解」にわかれます。

①訴え提起前の和解(即決和解)

訴え提起前の和解とは、当事者で和解の合意ができている場合に、簡易裁判所に申し立てをして和解調書を作成する手続をいいます。裁判の場で話し合いをするわけではなく、裁判外でした話し合いの結果を裁判所に認めてもらうイメージです。訴え提起前の和解は即決和解とも呼ばれます。

わざわざ裁判所を使った手続きをするのは、合意が守られなかった場合にすぐに強制執行できるようにするためです。

例えば、ある建物を不法占拠している人と建物の所有者との間で「1ヶ月後に立ち退く」という合意が裁判外でなされたとします。このケースで1ヶ月後に立ち退きがなかった場合でも、所有者は不法占拠者を強制的に立ち退かせることはできず、合意の履行を求める訴訟を提起し、勝訴判決を得なければなりません。訴訟は1年以上かかることもあり、大変な手間がかかります。

これに対して、「1ヶ月後に立ち退く」という合意について、訴え提起前の和解をしておくと非常に有効です。なぜなら、訴え提起前の和解を裁判所でしていれば、改めて訴訟を起こす必要はなく、すぐに強制執行に進めるからです。訴え提起前の和解の手続には1ヶ月程度しか要しないため、後で訴訟を起こす場合に比べると大幅に時間を短縮できます。

このように、裁判外でした合意について裁判所のお墨付きを得たい場合に用いられるのが訴え提起前の和解です。

②訴訟上の和解

訴訟上の和解とは、裁判所で訴訟をしている途中で、判決になる前に和解して訴訟を終了させることをいいます。争いがあって訴訟となったものの、訴訟の場で話し合った結果、双方が譲歩して和解になるということです。

訴訟において和解となる割合は比較的高く、最高裁判所の司法統計(令和2年)によると、地方裁判所の第一審では35.3%の事件が和解で終了しています。

(3)和解調書には判決と同様の効力がある

裁判上の和解が成立した場合に作成される和解調書には、判決と同様の効果があります。したがって、相手が和解で定められた義務を果たさない場合に、改めて訴訟を起こすことなく強制執行が可能です。

これに対して、裁判外で和解をした場合には、裁判所の関わりがなく和解調書が作成されていないため、原則として、強制執行をするためには、改めて訴訟を起こさなければなりません。

2、和解勧告のタイミング



(1)裁判中はいつでも和解できる

訴訟においては、裁判官が訴訟上の和解を当事者に勧告してくることがあります。勧告するタイミングに制限はなく、当事者の合意があればいつでも和解が可能です。

特に和解勧告がなされやすいタイミングとしては以下が挙げられます。

(2)訴訟を起こした直後

まず考えられるのが、訴訟が提起された直後に和解を勧告されるケースです。

裁判を最後まで行うと長い時間がかかります。司法統計(令和2年)によると、地方裁判所の第一審の平均審理期間は9,9ヶ月です。1年以上要するのも珍しくありません。

双方が納得するのであれば、訴訟は早く終わるに超したことはないため、訴訟を起こしてすぐに裁判官から和解の提案がなされることもあります。

(3)互いの主張が出揃った段階

裁判が始まると、まずは双方が自己の言い分を主張し、それを踏まえて裁判官により主張の整理が行われます。何回か裁判が開かれてお互いの主張が出揃った段階になると、和解の勧告がなされることが多いです。

主張が出揃うと裁判の争点が見えてくるため、全体の見通しがつきやすいです。判決になった場合の結果を見据えて、この段階で和解をしてしまうことも考えられます。

(4)判決の直前

主張が出揃った段階で和解が成立しなければ、証拠調べに進みます。具体的には、争点について判断するために、証人や当事者の尋問が行われます。ここまでくると訴訟も終盤で、判決が近い段階です。

尋問が行われて判決が出るまでの間にも和解が勧告されます。この段階では裁判官が判決になった場合の見通しをほのめかす場合も多いです。より判決の予想がつきやすい判決直前に和解するのも選択肢のひとつになります。

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