3、和解のメリット
訴訟上の和解をするメリットは以下のとおりです。
(1)裁判が早く終わる
訴訟での和解のメリットとしてまず考えられるのが、裁判が早く終了することです。
上述したように、地方裁判所の第一審の平均審理期間は9,9ヶ月で、1年以上かかることもあります。判決に対して控訴・上告がなされるとさらに長期化します。裁判が長期化すると、時間をとられるだけでなく精神的なストレスもたまりやすいです。和解すればその段階で裁判が終わるため、負担が軽減されます。
(2)柔軟な解決方法をとれる
和解であれば判決に比べて柔軟な解決方法がとれます。
例えば金銭の支払いを求めた裁判で請求が認められる場合、「○○円支払え」という判決になり、「○○円を分割で支払え」という判決にはできません。これでは相手の支払い能力が十分でない場合に不都合です。和解の場合、双方が合意すれば分割払いにしたり、保証人をたてたりすることも可能になります。
このように様々な解決方法を定められるのが和解のメリットのひとつです。
(3)負けるリスクを避けられる
和解すると、予想外の判決になってしまうリスクを避けられます。
証拠について判断が難しい場合など、判決直前になっても判決内容が十分に予想できないことがあります。その場合に「蓋を開けたら完全敗訴だった」というのは最悪のシナリオです。もし和解をすれば、完全勝訴とはなりませんが、完全敗訴ともなりません。
予想外の敗訴判決を受けるよりは、確実に最低限の結果を得る方がよいこともあり、その場合に和解は有効な手段です。
(4)決定した内容を実行してもらいやすい
和解で決着すると、判決になった場合に比べて合意した内容を実現しやすいとされています。
判決は当事者が納得するか否かに関係なく下されるため、納得しなかった側が判決に従わないこともあります。それに対して和解は双方が合意しており、実行可能な範囲の約束をしていると考えられるため、内容が守られやすいです。
もちろん和解であれば必ず守られるとは限りませんが、判決に比べて守られる可能性が高いといえます。
4、和解のデメリット
(1)妥協しなければならない
和解の大きなデメリットは、何らかの妥協をしなければならないことです。
判決になれば自分の主張が完全に認められるケースであっても、和解であれば早く解決することと引き替えに主張の一部はあきらめなければなりません。
和解のメリットも考えながら、後悔のない判断をする必要があります。
(2)後から覆せない
和解で合意した内容は、後で気が変わったり、別の事実が判明したりしたとしても基本的には覆せません。
例えば、過失割合が争点となった交通事故で和解すると、その後に事故状況を記録した新たな映像が見つかったとしても、基本的には、それをもとに和解の内容を変更するように求めることができなくなります。
後から覆せないため、和解の判断は慎重に行いましょう。
配信: LEGAL MALL