「妊娠中はつわりやだるさが影響して歯磨きがしにくいため、虫歯になってしまう方もいます。また、妊娠した方の全員に起こるわけではないのですが、ホルモンバランスが変化したことで血管が拡張し、歯ぐきが腫れてしまうことも。これは妊娠性の歯肉炎、歯周病といわれていて、歯磨きをするだけで出血してしまうことがあります」(池渕先生 以下同)
この症状は細菌のせいで起きているわけではなく、生理現象によるものなので心配はないそう。でも、この歯肉炎や歯周病が細菌性のものだった場合、どんなリスクがあるの?
「重度の歯周病は、早産や低体重児が生まれるリスクが増える疾患のひとつといわれています。リスクの高さは飲酒・喫煙と同じレベルです」
歯周病も糖尿や高血圧と同じように、赤ちゃんに影響を与える病気として認識しよう。そして妊娠中の歯のメンテナンスは、歯科検診に行ってプロに診てもらうことが一番だ。
●歯の治療による赤ちゃんへの影響は?
妊娠中に歯の疾患があった場合、治療してもいいのか心配。治療はできるの?
「治療するタイミングや痛みの度合い、症状によっても違います。たとえば妊娠中でも虫歯の治療はできますが、レントゲンが必要な処置はNG。また妊娠初期は薬も飲んでもらいたくないので、処方を避けることが多いです。外科処置がいる治療についてはタイミングに関わらず、出産後にします」
池渕先生によると、女性の悩みは妊娠中だけではなくもっと複雑なのだとか。
「不妊治療を始める場合やこれから妊娠・出産する予定があるとき、歯の治療について相談を受けることが多いです。長い期間がかかる治療をいつ行うのか、不妊治療の種類によっては抗生物質が飲めないなど、悩みによって対応が異なるため、歯科医に話してみてください」
妊娠中は、ただでさえ負担がかかる女性の身体。お腹の子どもをかばうために、思うような治療もできなくなる。日頃から口内環境を整えておこう。
(ノオト+石水典子)