●“生きづらさ”を感じる人が依存症に陥りやすい
「依存症は、誰でも陥る可能性があると私は考えます。人生が破綻するところまで行ってしまうのか…それとも、どこかで踏み止まり、無事社会復帰できるようになるのか…ここに大きな差があり、その差は、その人の周りに“応援団”がいるかどうかという点に尽きます。応援団がサポート体制にあれば、例え依存症になっても、回復することは可能です。ただし、このサポート方法が間違っていることがよく見受けられます。依存症と戦うには、自分、そして周りの応援団が“正しい知識”を身につけることが大変重要なのです」(高部氏 以下同)
高部氏は、「“依存症になりやすい人”には、もともと以下のような感情行動障害があると考えられる」と説く。
1.感情調節障害
強烈な感情にフリーズしてしまう。自分の感情を表現する言語が乏しい。
2.セルフモニタリング障害
自分の感情や疲労に鈍くなっている。自分の感情や疲労を自覚できない。
3.セルフケア障害
危険・不安を感じる能力が未発達である。
もともと持っている感情行動障害のために、様々な生活場面において“生きづらさ”を感じやすく、自身の心の痛みを和らげるために、依存物質に頼るようになるケースがあるという。
「特に“H→hungry(空腹)”“ A →angry(怒り)”“ L→ lonely(寂しさ)”“ T→ tired(疲労)”、この4つの場面に遭遇したとき、依存症が進行しやすくなります。専門家の間では、これを依存症の危険引き金“HALT(ハルト)”と呼んでいます」
高部氏が、世界保健機構WHOが示している「アルコール行動障害」についての診断基準を紹介してくれた。
【過去1年間に次のことがありましたか?】
□1.飲酒したいという強い欲望、または強迫感がある。
□2.飲酒開始、飲酒終了、飲酒量のどれかのコントロールが困難である。
□3.飲酒を中止または減量した時の生理学的離脱状態(手の震え、発汗、不眠、イライラ、麻痺、吐き気など)がある。
□4.耐性(飲み始めた頃の1.5倍以上飲まないと酔えないなど)の証拠がある。
□5.飲酒のために他の楽しみや趣味を無視するようになり、飲んでいる時間が多くなったり、酔いから覚めるのに時間を要するようになる。
□6.明らかに有害な結果が起きているのに、飲酒する。
「現時点では、これが世界的な基準においての“アルコール依存症確定診断基準”となります。どれか1項目でも当てはまれば、専門家の指導を受ける必要があり、3項目以上で、アルコール依存症が疑われます」
アルコールは危険な薬物であり、脳の理性や記憶、情動、最後には生命にかかわる部分を麻痺させると語る高部氏。脳が委縮することから「アルコール性認知症」が増えているとも言われている。もしもチェック項目が当てはまったら…隠さずに、いち早く専門機関を訪れてほしい。
(取材・文/蓮池由美子)