表面化しづらい主婦の依存症…理由は経済力が高い夫にあり!

第2回 急増中!ママの依存症
「だいじょうぶ!依存症」(現代書館)を執筆し、現在は精神保健福祉士として活動を続ける高部知子(元わらべ)氏を取材。現代社会で急増する“女性の依存症”について聞いた!

●女性のアルコール依存症が急増

「依存症は、特に“ママだからはまりやすい…”ということはないと思います。大切なのは、その人を取り巻く環境。依存症になる人は、孤独や疲労に対し、弱い傾向にあります。子育て中は、家庭内や学校の問題、すべてがお母さんの責任になりやすいですよね。疲れていて眠くても、孤独に頑張らなければいけない環境に陥りやすく、“お母さんなんだから、弱音なんか吐いちゃいけない”という意識が強く働きます。すべてを委ねられ、自分のキャパシティーを超えてしまうことがあるかもしれません。そのつらさや痛みを、アルコールやギャンブル、ショッピングなどの依存物質で紛らわせたくなる…というケースはあるかもしれません」(高部氏 以下同)

「この10年で、女性のアルコール依存症が急増している」と語る高部氏。

「厚労省の発表によると、2003年に8万人、2013年で14万人と、10年間でおよそ2倍に増えています。女性は、男性より少ない酒量で短期間に依存症へと移行します。それは男性より体内の水分量も少なく、内臓も小さいので、アルコールに対する処理能力が小さいからです。一昔前までは、日本において女性が人前でお酒を飲むことは“はしたないこと”とされていたため、自然と女性が飲むお酒の量は制限されていましたが、今は、歓迎会、新年会、忘年会、合コンなど、お酒を飲む機会に事欠きません。CMなどの影響もあり、女性が気軽にお酒を飲むことができるようになってきました。にも関わらず、お酒を飲むことのリスクについて教育が欠けているため、急激に女性のアルコール依存症が増えてしまっているのです。女性依存症患者の増加は、女性を取り巻く環境と大きく比例しています」

ママの依存症と夫の関係は?

では、適量とされるのはどれくらいの量なのか?

「アルコールも薬物の一種なので、体が解毒できる分量は決まっています。女性であれば、日本酒なら1日1合まで、ビールなら中ビン1本、ワインなら小さいグラス2杯まで。これ以上飲んでしまうと、女性は依存症になる可能性が高まります」

女性、特に主婦の依存症が表面化しにくい理由をこう分析する。

「主婦が依存症になると、妻の依存症を認めたくない…と世間体を気にして、ご主人がその事実を隠そうとする傾向にあります。経済的に恵まれているご家庭であれば、依存を続けることができるため、さらに表面化しにくくなり、事態は深刻化し やすいのです。逆に、依存資金が、夫の収入で賄いきれなくなった家庭では、妻が万引きや窃盗、売春に走るケースもあります。治療機関でも、女性が来院することが少ないのが現状。夫、そしてパートナーである男性方にこそ、“依存症は早期発見、治療すれば回復も早く手に入るのだ”ということを知って頂きたいですね」

ママの依存症は、育児放棄や虐待につながる可能性も…。家庭が機能不全に陥る前に、悲劇を繰り返さないためにも、早期の発見・治療が必要だ。

(取材・文/蓮池由美子)

お話をうかがった人

精神保健福祉士・高部知子が依存症を語る
高部知子
悠學塾主宰
1967年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。心の専門家を育てる「悠學塾」主宰。医療法人「京都十全会グループ」顧問。中学生の時にスカウトされ、NHK『ガラスのうさぎ』でデビュー。以後、『積木くずし』や3人ユニット「わらべ」などで活躍。精神保健福祉士、認定心理士、東京都認定薬物専門講師、浄土宗西山深草派教師などの資格をもち、全国で講演や教育セミナーを行っている。
1967年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。心の専門家を育てる「悠學塾」主宰。医療法人「京都十全会グループ」顧問。中学生の時にスカウトされ、NHK『ガラスのうさぎ』でデビュー。以後、『積木くずし』や3人ユニット「わらべ」などで活躍。精神保健福祉士、認定心理士、東京都認定薬物専門講師、浄土宗西山深草派教師などの資格をもち、全国で講演や教育セミナーを行っている。