共同養育とは?離婚しても2人で子どもを育てるためのポイント8つ

共同養育とは?離婚しても2人で子どもを育てるためのポイント8つ

3、共同養育のメリット

共同養育制度が導入されると、子どもはもちろん、親権者にも非親権者にも大きなメリットがあります。

ここでは、具体的にどのようなメリットが得られるのかをみていきましょう。

(1)子どもに両親からの愛情が注がれる

単独親権制度の下では、子どもは基本的に親権者の下でのみ育てられることになります。

離婚するまでは子どもにとって両親が揃っているのが当たり前だったのに、離婚後はもう一方の親に会いたくても会えないことになり、寂しい思いをしてしまいます。親がひとりしかいないと、学校などでも辛い思いをすることもあるでしょう。

しかし、共同養育制度によって離婚後も両親が子育てに関わるようになると、子どもは両親からの愛情を受けて育つことが可能になります。

(2)育児の負担を分担できる

親権者としては、子どもと一緒に暮らせるのは良いとしても、1人で子どもを育てていくのは大変です。離婚後は経済的に自立する必要もあるので、仕事と子育ての両立に悩む人も多いです。

共同養育制度が導入されると、育児の負担を分担することができるので、親権者の負担が軽減されます。

無理なく子育てができるようになるので、しつけや教育も、より行き届くようになるでしょう。

(3)子どもに会えない状態を回避できる

非親権者としては、どんなに子どもに対する愛情を深く持っていても、現行の制度下ではなかなか子どもに会えないケースが多いです。

そのため、両親が離婚時に親権をめぐってし烈な争いを繰り広げることになりがちです。両親が激しく争うことは、子どもの教育にとっても良くありません。

共同養育を実践すれば、非親権者も日常的に子どもと会えるようになりますし、親権をめぐって両親が激しく争うケースも減少すると考えられます。

(4)養育費が支払われやすくなる

現行の単独親権制度の下では、非親権者はどうしても子育てに関しては蚊帳の外になりがちで、養育費を支払うモチベーションを維持するのは難しいのが実情です。

特に、思うように面会交流をさせてもらえないケースでは、「なぜお金だけ支払わないといけないのか」という気持ちにもなってしまい、養育費の支払いがストップする原因にもなりがちです。

共同養育を行えば、非親権者も子育てに関わり、子どもの成長を日々実感するので、養育費を支払うモチベーションを保ちやすくなります。その結果、現状よりも養育費が支払われやすくなるはずです。

(5)監護親にもしものことがあったときに他方に引き継ぎやすい

離婚後に実際に子育てをしている側の親(監護親)が大病を患ったり、亡くなるなどして子育てができなくなった場合は、もう一方の親に子育てを引き継ぐことが考えられます。

しかし、もう一方の親が離婚後に子どもとあまり関わっておらず、子育てにも慣れていない場合は、スムーズに引き継げない可能性もあります。

共同養育によって日頃から子育てに関わっていれば、監護親にもしものことがあったときにも、スムーズに引き継いで円滑に子育てを続けていくことが可能になります。

4、共同養育のデメリット

一方で、共同養育にはデメリットもあります。共同養育を実践する前に、以下のデメリットも頭に入れておきましょう。

(1)二重生活が子どもの負担になることもある

例えば、1週間ずつ、あるいは1ヶ月ずつの交代で子どもを養育するという形で共同養育を実践した場合、二重生活が子どもの負担になることが考えられます。

生活の基盤が2箇所あるということになると、精神的に安定しない可能性もありますし、移動にかかる時間の負担も大きいかもしれません。

共同養育を実践するには、子どもの生活や精神面にかかる負担ができるだけ小さくなるように工夫する必要があります。

(2)どちらが子どもと住むかで両親がもめることがある

実際には、上記のように父母が交代で子どもを養育するという形がとられるケースは少ないと考えられます。子どもにかかる負担が大きすぎるからです。

そのため、共同養育制度が導入されても、基本的にはどちらかの親のもとで子どもが暮らすことになるケースが多いでしょう。

そうすると、父母が離婚時に親権をめぐって争わないとしても、どちらが子どもと住む監護権者となるかで激しく争うことが考えられます。

(3)相手方のDVやモラハラから逃げられないおそれがある

一方の親が配偶者や子どもに対してDV・モラハラを行っている場合、現行の単独親権制度なら離婚することによって逃げることが可能というメリットがあります。

しかし、共同養育が制度として導入されれば、離婚後も相手方と子どもとの関わりを避けられないため、逃げたい相手から実際上逃げられなくなるというおそれもあります。

(4)養育方針をめぐって両親が対立することがある

父母が離婚後も共同して子育てをする場合、養育方針をめぐって対立することもあるでしょう。

現行の単独親権制度なら親権者が単独で養育方針を決めることができますが、共同養育制度が導入されると、スムーズに養育方針を決めることができなくなるおそれがあります。

特に、もともと相手方との価値観が異なり、養育方針にすれ違いのあった両親の場合は、ことあるごとにもめてしまう可能性が高いでしょう。

(5)離婚が増える可能性がある

現行の法制度の下では、配偶者のことが嫌いになっても、子どもと離れたくないという理由で離婚を思いとどまっている人も多くいます。

子どもを育て上げ、高齢になってから「あのとき離婚しなくて良かった」という夫婦が数多くいるのも事実です。

しかし、共同養育によって離婚後も子どもに関わり続けることが可能になれば、安易に離婚してしまう人が増えることが懸念されます。

(6)再婚が難しくなる

共同養育を実践する場合、再婚することは難しい問題となってしまいます。

現行の法制度の下では、子ども連れで再婚し、新しい家庭で本当の親子として生活していくケースも数多くあります。

しかし、共同養育制度が導入されると、もう一方の親も子どもに関わり続けますので、新しい家庭を築くことが難しくなるのです。

子どもにとって「本当の親」と「新しい親」が併存すると精神的に混乱をきたす可能性が高いので、それを心配して再婚を躊躇する人も増えるでしょう。

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