「この前、幼稚園年中の息子が髪の毛の薄いおじさんを指さして“あっ、ハゲだ~!”って大声で言ってしまって。もう血の気が引きました」
「私の年長の娘は、ちょっとふくよかなママ友に、“なんでおばちゃんの腕ってこんなにプヨプヨしてるの?”と言ってしまって。仲のいいママだったから笑って許してくれたものの、相手次第では…と考えたら恐ろしくなりました」
「私の1年生の娘が、お友達のママがせっかく作ってくれたパスタを“このパスタ美味しくない~。いらなーい”と失言。周りのママたちも凍りつき、もちろんひたすら親子で謝りましたけど、その後そのママにお呼ばれされなくなりました」
逆に失言されたママのエピソードも…。
「私は、小学3年生の娘の友達がわが家に遊びに来たときに、○○ちゃんの家、狭いね~。って言われて。事実なだけに何も言えませんが、ちょっとその子を見る目が変わってしまいました」
これらのエピソードを受けて、子育て本作家で講演家の立石美津子さんに子どもの失言の対処法について伺いました。
「皆さん、いろいろな失言エピソードがありますね。ただ、子どもはこういう経験を通してコミュニケーションを学んでいくので、学びの機会だと思うようにしてください」
年齢に応じて、対処法は少し違ってくるそう。
「3歳くらいまでの幼児の場合、まだ発達が未熟で相手の気持ちを推し量ることまでできません。つまりしつけてもわからない年齢なので、相手の容姿を見たままストレートに口にしてしまうこともしばしばです。幼児が失言する場面に遭遇した際は、その場は親が子に変わって誠意をもって謝罪し、あとで言われた相手がどんな気持ちになるか…など、きちんと話して聞かせましょう」
4歳くらいから、少しずつ子どもは相手の気持ちを推し量れるようになっていくという。
「発達の個人差もありますが、4歳くらいからだんだん相手の気持ちを考えられるようになってきて、小学生になれば、相手に合わせた丁寧語もだんだん使えるようになってきます。そうなってくると、言っていいことか? 悪いことか? ということや、人間関係も理解できるようになってきますよね? ですから、目に余る失言があった場合は、その場で親がきちんと指摘して、本人に謝罪させてください」
子どもはその場で言わないと忘れてしまうからだという。
「ただし、その場では事を大きくして長々と説教するのではなく、相手に謝罪の誠意を見せることにとどめてください。その場で説教をはじめてしまえば、言われた相手もなんだか気まずい感じになってしまいますし、大勢の場なら場の空気も悪くなってしまいます」
そして、そのあとの対応がとても重要だと、立石さんは話します。
「家に帰ってから、なぜ言ってはいけなかったかという理由、相手を思いやることの大切さをきちんとお子さんに説明してください。これが一番大事。この経験を今後に生かせるように、きちんと理解させましょう。そうは言っても、経験は積んで学んでいくもの。なかなか失言が直らないお子さんの場合は、“悪いことは思っても口には出してはいけない。心にしまっておく”ということをまずは教えることも、失言のトラブル回避に効果的です」
政治家が失言で立場を追われるニュースもしばしば。大人になってからの失言は取り返しのつかないことにもなりかねません。まだ失言が許される子どものうちに、たくさんの経験を通して学ぶことが大人になってからのコミュニケーションの基盤となるのです。
(構成・文/横田裕美子)