「不妊症とは、性成熟期のカップルが一定期間性交渉を行っても、子どもを授からないことをいいます。検査を受ける時期は諸説ありますが、日本産婦人科学会はその期間を1年としています。不妊の原因を探るなら、半年で検査を始めてもいいという見解もあります」(片桐先生 以下同)
不妊治療が珍しいことでなくなった現在、ネガティブなイメージは払しょくされつつある。そのため、検査を受けることへのハードルが低くなった様子が見受けられるそう。
「とくに若いカップルは、夫も検査に積極的です。不妊の原因が、女性側だけでなく男性側にもあることが広く知られるようになったのも大きいと思います。男性側に原因があるとされる割合は、男女どちらにも要因がある場合を合わせて、全体の48%になります」
●不妊治療のステップは、検査結果によって異なる
検査が済み治療が始まると、まずはタイミング法の指導がある。ここで叶わない場合は、人工授精、顕微授精を含む体外受精と、高度な医療にステップアップしていく。だが検査の結果によっては、その流れをくまないこともある。
「通常はひとつの治療法を6回試して子どもが授からなかった場合、次のステップに進みます。ですが、例えば受精卵が通る卵管に何らかの障害があると分かった場合、そのままタイミング法を試しても成功率は低い。そのため、卵管の疎通性を改善させる治療や体外受精を検討します」
30代後半になると卵巣機能が低下してしまっているため、同じく体外受精を試みるケースも多い。体外受精は受精卵を直接子宮に戻すため、周期あたりの妊娠率は、一般不妊治療と比較して妊娠率が高いといわれる。最近は排卵誘発剤を用いる「卵巣刺激方法」のバリエーションが増え、自己注射や腟錠などの利用により、通院回数を減らすなど、治療を受ける方の通院の負担が減らせるようになった。
近年卵子年齢の老化について報道があるなど、高齢出産のリスクについて広く知られるようになった。とはいえ、高度な不妊治療技術に対する高すぎる期待感もあると片桐先生は感じるそうだ。
「医学的な女性の妊娠適齢期は20代~30代前半ですが、人として成熟する時期や社会的な経済力を考えると、一概にもいえません。とはいえ、加齢による受精率の低下や流産率の上昇は、どなたにもありえること。それは不妊治療の成功率とも比例しています」
個々の人生設計も考慮しつつ、治療はなるべく早めに検討してほしいそう。子どもがほしいのにもし不妊の兆しがあるならば、検査を受けることをまずは検討してみて!
(ノオト+石水典子)