アクティブラーニングが必要とされる理由は?家庭でできる方法も

第146回 みんなが共感!ママのお悩み
アクティブラーニングは、従来の学習方法にはないメリットを持つ学習方法として注目されていますが、子どものころに受けた経験がなくイメージが湧かない人もいるでしょう。アクティブラーニングが必要な理由や、家庭での実践方法などを紹介します。

アクティブラーニングとは?

文部科学省がアクティブラーニングを積極的に取り入れる方針を決めたのは、2017年ごろからです。着々と教育現場に浸透しつつありますが、まだ一般に広く知られているとはいえません。どのような学習方法なのか、見ていきましょう。

「能動的学習」を指す

アクティブラーニングとは「生徒が自ら積極的に考えて学ぶ学習方法」のことです。授業をただ聞くだけでなく、与えられたテーマについて自らの手で調べたり、討論を行ったりして答えを出します。

自分の意見を伝えながら、ほかの生徒の意見を聞いてまとめたり、必要であれば実地調査やインタビューなどを行ったりすることも珍しくありません。

一般的な学習方法は、教師が教科書・イラスト・表などを使って一方的に教え、生徒に理解してもらうように努めますが、アクティブラーニングは生徒が中心となって授業が進みます。

元々は大学の講義や一部の高校の授業などで実践されていましたが、その有用性が注目され義務教育にも取り入れられるようになりました。

アクティブラーニングが必要とされる背景

近年の社会では「IT化」「グローバル化」が進んでおり、今以上に発達した未来では、これまで人の手で行ってきた仕事がAI(人工知能)に取って代わるとされます。

このような時代の変化に応じて、求められる人材の姿は変わってきました。単に知識を持っているだけでなく、AIには成し得ない「物事を主体的に考えて解決する能力」が必要になったのです。

これまでの学習方法では積極性を養うことが難しいため、より発展的な方法が求められるようになり、アクティブラーニングが取り入れられることとなりました。

アクティブラーニングのメリット

アクティブラーニングには従来の学習方法にはない、多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。

自ら学ぼうとする能力が身につく

自ら学ぼうとする能力を養えるところが、アクティブラーニングにおけるメリットのひとつです。例えば、課題解決型学習(プロジェクトベースドラーニング)では、与えられた課題に対し自分で考えたり、ほかのメンバーと意見を交換したりしながら答えを導き出します。

グループで課題を解決するには、自分の意見を他者にわかりやすく伝える必要があり、資料を集めて情報をまとめるなど、自ら進んで行動しなければなりません。

一方的に講義を聞く学習方法とは異なり、自ら学ぼうとする姿勢がなければうまく議論を進められないでしょう。また、自分だけでなくグループのメンバーとも知識を共有するので、より深く物事を理解できます。

問題解決能力が身につく

アクティブラーニングは問題を解く方法を教わるのではなく、自分で「どうすれば解決できるか」を考えるので、問題解決能力が身につきます。

ときには、答えが出ない問題に対して議論することもあり、生徒が自分で何が問題なのかを見つけ、どうすれば解決できるのかを考えなければなりません。

アクティブラーニングを行えば論理的思考力が鍛えられ、物事を様々な視点から考えられるようになります。

問題が起きたとき、どうすれば解決できるのかを考えられる力は、学習の場だけでなく日常生活や社会に出てからも大いに役立つでしょう。

コミュニケーション能力の発展も

アクティブラーニングでは、グループで問題解決にあたる機会が多く対話が増えるため、コミュニケーション能力も養えます。

グループワークでは自分の意見を言うだけでなく、他者の考えも聞いて判断しなければ結論を導き出せません。ときには、自分よりも他者の言い分を尊重しなければならない場面も出てきます。

コミュニケーションを通じて「様々な考え方」に出会うので視野が広がるとともに、どうすればわかりやすく意見を伝えられるのかを学べて、対話能力も鍛えられるでしょう。

アクティブラーニングのデメリット

良いことばかりに思えるアクティブラーニングですが、デメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。

時間がかかる

アクティブラーニングは生徒が自分で考え、意見交換や議論をしながら進めていきます。意味のある学習をするには「自ら答えを導き出す課程」をたどらなければなりません。

一般的な授業に比べると、どうしても多くの学習時間が必要となるところはデメリットといえるでしょう。アクティブラーニングを積極的に取り入れたくても、多くのカリキュラムをこなさなければならないため、実現が難しいケースも珍しくありません。

学習の成果を感じられるまでに時間がかかる点を理解した上で、一般的な授業と組み合わせて活用することが大切です。

評価が難しい

アクティブラーニングは「正しい答えを導き出せたかどうか」を重視するのではなく、結論にたどり着くまでの「過程」に目を向けます。一般的なテストの結果とは異なり評価を数値化できず、採点が難しい点もデメリットのひとつです。

課題解決にあたって行われる討論の内容に、正解や不正解があるわけではないため、どんな基準を元に評価するかを考えるのは難しいといえるでしょう。

課題に対する積極性や内容の理解度などが評価のポイントとなってきますが、明確な評価基準が決まっておらず、確実な評価をしづらいのが現状です。採点の判断基準をどう設けるかが、今後の課題となっています。

受験対策には向かない

アクティブラーニングで得たものを、そのまま受験に生かせるわけではないという点もデメリットといえます。通常の授業で十分な知識を身につけなければ、受験には対応できないでしょう。

アクティブラーニングに多くの優れた面があっても、現行の受験システムに取り入れることは困難です。評価基準をどうするか、明確にできないものを試験にすると混乱を招きかねません。

ペーパーテストのように明確な採点基準があり、優劣をつけやすいものが受験の中心である限り、現状の受験対策は知識を詰め込むことが求められるでしょう。

アクティブラーニングの実施例

どんなに良いとされる学習方法であっても、生徒のレベルに合わせたやり方で行わないと、授業についていけない子どもが出てきてしまいます。小学校では、どのような取り組みが行われているのでしょうか。

国語の時間

小学校の国語の時間にアクティブラーニングを取り入れる際は、「日常生活に不可欠な国語への理解度」を高め、表現力や思考力を養うことを目的とします。

例えば、物語の登場人物の心情を考えさせ、ほかの生徒と意見を交換し合う学習方法があります。この方法なら、自分がどう思ったかだけでなくほかの生徒の意見を聞くことで、様々な考え方を知ることが可能です。

ほかにも、文章と写真を関連づけて学習している学校もあります。新聞記事に合う写真の選び方を生徒に考えさせ、実践したあとに話し合う機会を設けることで、言語感覚を養う取り組みを行っているのです。

理科の時間

理科の時間は「仮説を立てて実験を行い、結果を考察する」という流れがあるため、アクティブラーニングを取り入れやすい科目といえるでしょう。

小学校の授業では、生徒それぞれに実験結果の予想を考えさせたあとに、グループで意見をまとめて発表する形式で行われることがあります。

与えられたテーマを元に生徒たちが実験方法を考え、結果を検証するパターンもあるようです。結果はクラス全体で共有し、どうしてそのようになったのかを考察する時間も設けられます。

学校によって様々なテーマが選ばれており、身近な場所の自然環境保護について考えさせる試みも行われています。

開発と自然の保護を同時に行うにはどうしたらよいのか、といった議論をしながら課題を解決していく能力を向上させることが目的です。

家庭で行うアクティブラーニング

学校だけでなく、家庭内でもアクティブラーニングを取り入れることは可能です。どのような方法があるのか見ていきましょう。

本の内容・学習内容を説明してもらう

家庭で気軽に取り組むなら、本の感想や学校で習った内容などを子どもに説明してもらう方法がおすすめです。自分が受け取った情報を他者に伝えることで表現力が身につき、学習した内容への理解がより深まります。

本や映画などを楽しんだあとは「心に残った部分はどこ?」「登場人物についてどう思う?」など、子どもに問いかけてみましょう。「面白くなかった」というようなマイナスの意見が出てきても構いません。

さらには「どんなストーリーにすれば面白いと感じる?」などを話し合えるとよいでしょう。親はサポート役に徹し、子どもの意見を聞くことが大切です。

自分で選ぶ・決定させる

子どもに主体的な考え方をさせるには、子ども自身に何を選ぶべきかを考えさせ、できるだけ自分で決定して行動する機会を増やすとよいでしょう。

「朝食に何を食べるかを決める」「お風呂に入る時間を決める」など、日常生活のなかで本人がやるべきことに対し決定権を与えると、子どもは親から指示されるのではなく自分の意志を実行するという経験ができます。

子どもが自分で決めて行動する機会を奪わないように注意しながら、行動を選ばせる機会を与えましょう。

自発的に勉強してほしい場合は、ただ「勉強しなさい」と言うのではなく、勉強時間を子ども自身に決めさせて「今日は、勉強は何時からだっけ?」というように、問いかけることがポイントです。

わからないことを一緒に考える

子どもが日常や学習のなかで疑問に思ったことや、わからないことが出てきたら、親も一緒に「どうすれば解決できるのか」を考えてみましょう。答えをただ教えるのではなく、自分で解決方法を見つける過程を経験してもらうのです。

例えば、名前がわからない植物や昆虫などを見つけたら、一緒に図鑑を見て探すというように経過をたどりましょう。「こうすれば、ものの名前がわかるのか」と子どもに気づかせられるため、達成感や学習の喜びを味わえます。

まとめ

アクティブラーニングは、生徒が主体的に物事を考えられるように学習する方法のことです。授業を一方的に聞くだけでなく、自分で物事を考えて発表する機会を得られます。

論理的思考や問題解決能力を養い、他者に物事を伝える能力が磨かれるところなどがメリットです。一方で、学習に時間がかかるといったデメリットもあります。

学校だけでなく家庭でもできる取り組み方はたくさんあるので、親子でアクティブラーニングに取り組んでみましょう。

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