●子どもの被害妄想は、親との関係が深く関与する
【子どものこんなサインに要注意】
・自分の欲求を遠回しに言う
(そのままの自分は受け容れてもらえないという不信感がある)
・必要以上に外見を気にする
(自尊感情が低いほど、他者に自分がどう映るかが気になる)
・人との関わりにおいて迎合的
(被害者になるかもしれないという不信感から、自分を抑えて他者に合わせ、自分を守ろうとする)
・緊張しやすい
(人に傷つけられるかもしれないという警戒心や完璧でなければならないという脅迫心がある。何か新しいことをする時、必要以上に緊張する)
・歯ぎしりがひどい
(ストレスで交感神経が優位となり、心が緊張状態になる)
「実際に不登校症候群の子どものカウンセリングをしていると、被害妄想予備軍と言える一面が見えることが多いですね。その背景として挙げられるのが、日本の教育の傾向。“真面目な子に育てることが正しい”“そのような子に育てば、将来幸せになれると思い込んでいる親が多い”ことが挙げられ、社会全般や学校でも、そのような風潮があります。必然的に、多くの親が学業優秀を望み、従順で問題を起こさない子どもを理想として子育てに取り組んでしまう。親が“真面目な子”を強く望むと、子はそうあるために、子どもらしい欲求やわがまま、やんちゃや怠け心を抑えてしまいます。そうしていくうちに、“ありのままの自分が愛されている”という安心感が欠如し、その不信感から被害妄想が始まるのではないでしょうか」(森氏 以下同)
それでは、被害妄想は、どんな性格、特徴をもった子どもが陥りやすいのだろうか?
「そもそも子どもというのは、小さければ小さいほど、何でも周りのせいにしたがります。例えば転んだときなど、自分の不快感情を母親に受け容れてもらうことによって機嫌を治すことができるのです。幼児期に母親にしっかりと依存し、受け容れてもらうことによって初めて“自分は存在していいのだ”という安心感を得ることができ、それが心の基礎(基本的安心感)となります。でも、それが十分でなかった子=親からすれば聞き分けがよく手のかからないいい子だったりしますが、それは決して子育てがうまくいっているとは言い難く、むしろ“ありのままの自分が受け容れられる”という安心感がないために、自尊感情が十分に育まれない子になってしまうケースがあります」
そういう子どもたちが、なぜ被害妄想に陥るのか?
「いい子でいるためには、甘えを抑圧しなければなりません。無意識のうちに、親に表現できなかった怒りや敵意が抑圧され、その想いを他者に投影するようになっていくのです。例えば“今日先生は、○○さんのことは褒めたのに、僕のことは褒めてくれなかった。先生は僕のことが嫌いなんだ”と考えるようになります。自分を褒めてくれなかった先生に怒っているのは自分なのに、その気持ちを先生に投影し、あたかも先生が自分を嫌っているように解釈して、自分を被害者に仕立て上げるのです」
子どもの被害妄想は親との関係が密接に関わっていると推測されるが、どんな親が、子の被害妄想を生んでしまうのか?
「依存型で、自分の価値を他者に委ねる、他者に自分を認めてもらうことを必要としている親ですね。他者が自分をどう評価しているのか、自分の子どもがどう評価されているのかがとても気になるので、必然的に警戒心や脅迫心が強くなり、子どももまた、緊張感を感じながら育つことになります」
こうした親に育てられると、「真面目できちんとした子であれば周りの大人に愛されるけれど、そうではない自分は愛されない」と思うようになってしまうという。
世知辛い世の中、難しいところだが、周りの評判や評価は気にせず、わが子の個性やありのままの姿を愛し、受け容れてあげることが親の役目。子の自己肯定感を育むことが、いらぬ被害妄想から遠ざける一番の秘訣なのかもしれない。
(取材・文/吉富慶子)