インターネットの投稿等で誤って他人の名誉を棄損してしまったら?発信者情報開示について解説

インターネットの投稿等で誤って他人の名誉を棄損してしまったら?発信者情報開示について解説

3、発信者情報開示請求がされた後の事後の対策

(1)投稿を消しても意味がない

発信者情報開示請求がされた後、「やばい」と思って投稿を消しても意味がありません。

すでに投稿自体は写真等で保全されていると考えられますし、投稿を行った際のIPアドレス・タイムスタンプ等の情報は、投稿を消しても消すことができないからです。

ただ、いつまでも誰かの権利を侵害する投稿を残しておくことは不適切ですから、自分自身でも権利を侵害するような投稿であると考える場合には、すぐに投稿を削除することは大事です。

(2)「発信者情報開示に係る意見照会書」に対して拒否の意見を述べる

発信者情報開示請求がされた場合、インターネットサービスプロバイダ等から、「発信者情報開示に係る意見照会書」という書類が届きます。

これは、自分自身が行った投稿について、発信者情報開示の請求があったことを知らせるもので、開示に応じるかどうかという意見を記載することができます。

ここで拒否の意見を述べると、インターネットサービスプロバイダ側で、発信者情報開示請求者と争うことになります。

具体的には、発信者情報の開示を求める者と、インターネットサービスプロバイダとが、裁判で、発信者情報の開示が認められるかどうかを巡って争うことになります。

もっとも、インターネットサービスプロバイダの側では、投稿を行った際の具体的な事情は当然分かりませんから、何か言い分がある場合には、具体的に記載することが有益です。

(3)発信者情報開示に対する主な反論3つ

①侵害された個人が特定できない

ある投稿によって名誉権やプライバシー権が侵害されたといえるためには、その投稿が特定の個人を指していることが分かること、つまり侵害された個人が特定できることが必要です。

たとえば、投稿の中に氏名、住所が詳細に記載されている場合には、個人が特定されているといえますが、「東京都千代田区に住む、田中さん」といった程度では、個人が特定されているとはいえません。

その場合には、他の情報(性別、職業、年齢等)とあわせて個人が特定されているかどうかが判断されますが、ケースによっては微妙な判断となるため、まずは個人が特定されていないとの反論が有効です。

②意見・論評である

名誉権侵害とは、具体的な事実を指摘して、個人の名誉を下げる行為をいいます。

たとえば、「Aさんは学生時代万引きを繰り返していた」というのは、「万引きを繰り返していた」という具体的事実を指摘して、Aさんの名誉を下げる行為ですから、名誉権侵害にあたります。

これに対して、個人の主観的な意見や論評は、事実を指摘するものではありませんから、名誉権侵害にあたりません。

たとえば、「Aさんは犯罪者のような目つきをしている」というのは、「犯罪者である」という事実を指摘するものではなく、個人の主観的な感想にすぎませんから、これだけでは名誉権侵害にはあたらないと考えられます(ただし、どう考えても不適切な指摘であることはいうまでもありません。)。

上記は不適切な例ですが、これとは異なり、名誉権を侵害する表現なのか、意見・論評なのかは微妙なケースは多いです。

名誉を侵害するつもりはなく、単に自分自身の意見を述べたにすぎない場合には、そのように反論することが有効です。

③公共の利害に関わる+真実である(真実であると誤信した)

ある表現が公共の利害に関わり、かつ、真実である場合には、名誉権を侵害する表現であっても正当化されることがあります。

たとえば、「A学校のB先生は生徒にわいせつをしている」という表現は、何の根拠もなければ名誉権侵害ですが、それが真実である場合には、名誉権侵害が正当化されうると考えられます。

したがって、自分自身の投稿にきちんとした根拠がある場合には、その根拠をきちんと示すことが重要です。

4、自分の情報が開示されてしまったらすべきこと

(1)安易に回答しない

前に説明したとおり、発信者情報開示請求がされた場合、インターネットサービスプロバイダ等から、「発信者情報開示に係る意見照会書」という書類が届き、これに対して回答することができます。

この回答書は、発信者情報の開示を求める者に開示されることもありますから、回答は慎重にすることが必要です。

(2)弁護士に相談する

発信者情報開示請求に対する反論は、ある投稿が名誉権侵害にあたるのかどうか、プライバシー権侵害にあたるのかどうかといった法的な判断を必要とします。

また、実際に発信者情報の開示がされるおそれがどの程度あるのか、発信者情報が開示された場合にどのような対応を取ることが良いのかといった判断は、弁護士でなければ難しいといえます。

そこで、まずは弁護士に相談し、その後の対応等について相談することが勧められます。

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