「子どもの成長には、多くの要因が影響を与えるんです。体の内的要因としては、遺伝的要因やホルモン、代謝などがあり、外からの要因としては、栄養、感染、薬剤、精神的環境、運動、睡眠などがあります。しかし、基本的には内的要因が成長に重要な要素なんです」(田中先生 以下同)
つまり、遺伝・体質による要因がほとんどだそう。では、生活習慣で身長を伸ばすことはできないのだろうか?
「外的要因のうち、よく言われる“栄養”“睡眠”“運動”は、成長に大きく影響します。しかし、これらの外的要因の改善は、あくまでもお子さんが持つ内的要因を十分に発揮させる環境を作るだけで、その子どもなりの成長率以上に成長させることはできません」
つまり、規則正しい生活習慣は、成長の妨げを阻止することにつながると、田中先生は話します。
「生活習慣が乱れれば、せっかく伸びるはずだった身長も伸びなくなってしまうということですね。お子さんが生まれ持つ成長率を最大限に発揮させるために、生活習慣を整えてやることは基本的な条件となります」
では、最大限に発揮させるために、気を付けるべきこととは?
「栄養については、背を伸ばすためには基本的に肉、魚、大豆製品、卵など“たんぱく質”が重要です。だからといって、たんぱく質ばかりとることも難しいですし、ほかの炭水化物や脂質もないと、代謝がうまくいきません。つまり、バランスのよい栄養をとることが大事です。“牛乳が背を伸ばす”という牛乳神話がよく言われますが、カルシウム源としては理想的ですが、たんぱく源としては不十分です」
“睡眠”についても、たくさん寝れば成長につながるということではないという。
「睡眠については、長く寝ることや、時間帯が重要なのではなく、“深い睡眠”のときに成長ホルモンが分泌されるので、質が重要なのです。また人は深い睡眠と浅い睡眠を繰り返していますので、成長に必要な成長ホルモンの量のためにはある程度の睡眠の長さが必要です。しかし睡眠が長すぎても、最後のほうは夢ばかりみるような浅い睡眠になってしまうのであまり意味がありません」
“運動”は、代謝を高め、背が伸びやすい体を作るという。
「運動も、やりすぎは注意です。やりすぎるとそこでカロリーを使ってしまうので、成長に必要なカロリーが不足してしまうのです。運動した分、たくさん食べられる子はいいですが、疲れてあまり食べられない子や、体重が減っていく子は伸びが悪くなるので気をつけてください」
では、低身長の原因となる病気などもなく、遺伝・体質的要因の低身長の子が、どうしても自分の成長率以上に伸ばしたい場合、何か方法はあるのだろうか?
「成長ホルモン治療があります。しかし、なんらかの病気が原因で低身長の場合は保険治療が適用されますが、遺伝やその子の体質など、病気が原因でない低身長の場合は、保険治療が適用されないんです。保険でなく自費治療で成長ホルモン治療を行うことも、施設によっては可能ですが、日本は成長ホルモンが世界でも一番高く、高額な成長ホルモン治療は経済的負担がかなり大きくなってしまいます。また途中で止めると、その後1年間の成長率はかなり低くなります。治療を続けるためには、親子共々かなりの覚悟が必要となりますので、病気などの原因でないのであれば、あまり“高身長信仰”にとらわれることなく、お子さんの個性のひとつと理解し、お子さんのよい面に目を向け、そこを伸ばしてやることも大事かと思います」
大事なことは、お子さんが生まれもつ成長率を最大限に発揮させるための環境づくり。日々の規則正しい生活習慣を心がけましょう!
(構成・文/横田裕美子)