元夫が再婚したら養育費はどうなる?減額を希望された際の対処法も

第174回 みんなが共感!ママのお悩み
元夫や自分が再婚すると、受け取っている養育費の金額は減るのでしょうか?養育費の役割・支払期間・注意点のほか、再婚にて養育費が減額されやすいパターンについても解説します。親権者を悩ませる、養育費の減額・未払いへの対処法もチェックしましょう。

まずは養育費の基本をチェック

そもそも、養育費にはどのような役割があるのでしょうか?まずは、養育費が存在する理由・支払う期間などを含めた概要について解説します。

子どもを育てるために必要な費用

養育費とは、子どもが心身ともに健やかに育つために必要な費用のことです。子どもの父母には、両方に養育する義務が生じます。たとえ離婚して子どもと同居しなくなったとしても、養育する義務はなくなりません。

ただ、同居していない状態で子どもの食事を作ったり、お風呂に入れたりなどの世話をするのは難しいのが現実です。そのため、子どもの親権を持っている側に養育費を支払うことによって、親権を持っていない方の親も育てる義務を果たしているというわけです。

参考:養育費|法務省

子どもが成人するまで支払うのが基本

基本的に、養育費を支払う期間は「子どもが成人するまで」とされています。ただ、2022年4月1日に成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことにより、養育費を20歳まで払うべきなのかそれとも18歳まででよいのか、人によって判断が揺れる可能性が出てきました。

起こり得るトラブルとしては、例えば2022年4月1日より前に「子どもが成人するまで(その時の基準では20歳まで)養育費を支払う」と決めていた場合、成人年齢が変わったことにより、子どもが18歳になった時点で元夫から養育費が支払われなくなる恐れがあります。

また、子どもが大学に進学した場合、成人した時点で養育費の支払が終了すると親権を持っている側の経済的な負担が大きくなり、困ることになるでしょう。

このようなトラブルを防ぐためにも、養育費の支払期間を決める際には「子どもが22歳になる年の年度末まで」のように具体的な期限を決めておくのをおすすめします。

参考:成年年齢の引下げに伴う養育費の取決めへの影響について|法務省

お互いの状況により金額を変更される場合も

離婚の際、公正証書を作成して養育費の額を決めた人もいるでしょう。しかし、たとえ公正証書を作成したとしても、お互いの状況によっては養育費の額が変更される場合もあります。

養育費の額が変更される理由はシンプルで、離婚の際に作成した契約は固定されるわけではないからです。

そのため、失業・病気などで元夫の年収が大幅に減った場合は、経済的な理由で養育費の減額を請求される可能性は十分に考えられます。

ただ、元夫が減額を希望したからといって、あなたが納得していないにもかかわらず養育費が減らされてしまうことは多くありません。養育費の金額を変えるためには、お互いの同意もしくは裁判官から受ける審判が必要だからです。

養育費が減額されやすい再婚パターンは?

元夫はもちろん、あなたが再婚したからといって必ず養育費が減額されるわけではありません。再婚によって減額されるには、大きく3つのパターンが考えられます。

自分の再婚相手が子どもと養子縁組をする

たとえあなたが再婚したとしても、相手の男性に子どもを扶養する義務は発生しません。そのため、子どもの父親である元夫は、あなたの再婚後も引き続き養育費を支払う義務があります。

ただし、再婚相手があなたの子どもと養子縁組をした場合は例外です。養子縁組を行うと、再婚相手にも子どもを扶養する義務が生じます。その場合、元夫からの希望に応じて養育費が減らされる可能性は十分に考えられるのです。

なお、再婚相手の収入が多い場合には、養子縁組をしていなくても養育費が減らされることもあるので注意が必要です。

元夫の再婚相手が病気などで無収入

元夫の再婚した相手が病気などの理由で働けず、収入がない場合には、養育費の減額が認められる可能性があります。

当然ながら配偶者である元夫には再婚相手を扶養する義務があるため、経済的な負担が大きいと判断されるからです。

ただ、再婚相手が健康に問題がないにもかかわらず仕事をしていなかったり、就職活動をしていなかったりする場合には、働けない状況とは見なされません。

再婚相手が専業主婦なのを理由に、元夫が養育費の減額を請求してきたとしても養育費がゼロになることはレアケースです。仮に働いたとしたらどの程度の収入になるかという「潜在的稼働能力」を考慮された上で、減額されるケースが多いでしょう。

元夫と再婚相手の間に子ども・養子ができた

元夫が再婚して相手との間に子どもができた場合は、希望に応じて養育費が減額される可能性が高まります。理由はシンプルで、再婚して生まれた子どもにも親から養育される権利があるため、元夫の扶養人数が増えて経済的な負担が大きくなるからです。

また、再婚相手の子どもと元夫が養子縁組をすると、実子でなくても扶養する義務が生じます。

このように再婚を機に子どもの人数が増えた場合、経済的な事情から養育費の減額が認められるケースは少なくありません。

養育費の減額を希望された際の流れ

前の夫から「再婚したから、養育費を減らしてほしい」と言われたときには、どのように対応すればよいのでしょうか?話し合いから調停までの流れはもちろん、調停委員からの印象を悪くしないための注意点も解説します。

まずは2人で話し合う

納得ができない理由で養育費の減額を希望されると、感情的になってしまうのも無理はありません。2人で話をしても解決しない場合には、養育費の減額調停に進み、調停委員が間に入った話し合いが必要です。

その場合、調停委員は元夫・あなたの双方から話を聞くため、元夫から「感情的に怒鳴られて、うまく話せなかった」と言われる恐れがあります。

調停委員からの印象をよくするためにも、2人で話し合うときからできるだけ冷静に対応することをおすすめします。

元夫の言い分に納得できない場合には、相手の話を最後まで聞いた上で自分の要望・意見を伝えるとよいでしょう。また、公正証書を作り直すことも踏まえ、話し合いで決めた内容を記載しておくのが大切です。

養育費の減額調停から審判へ

2人で話し合っても解決しない場合には、減額を希望する元夫から「養育費減額請求調停」を申し立てるのが一般的です。

養育費減額請求調停が成立すると、調停調書が作成されます。それぞれが家庭裁判所に出向いて調停委員と話をするため、基本的には相手と顔を合わせずに済みます。

ただ、話し合いに時間がかかるのが難点で、最初の調停終了後、次の調停が行われるまでに約1カ月かかるのが基本です。双方が納得するか、調停委員が「合意にいたらない」と判断するまで、話し合いが続きます。

養育費減額請求調停でも解決しない場合には、「養育費減額審判」に移行して裁判官が審判を下す流れです。

裁判官の審判によって決められた養育費の額に不服がある場合は、その旨を申し立てましょう。申し立てを行わない、もしくは裁判所にそれを退けられた場合は、決められた額を守る必要があります。

参考:養育費に関する手続 | 裁判所

養育費の未払いはどうすればいい?

元夫からの養育費がいきなり支払われなくなった場合には、どのように対応すればよいのでしょうか?養育費の未払いへの対処法を、調停調書の有無を踏まえて解説します。

調停調書などがあるなら強制執行の手続き

調停調書・和解調書などの「債務名義」がある場合は、すぐに強制執行の手続きができます。

債務名義とは「合意して決めた約束を守らないときには、強制執行を申し立てていい」と許可した文書のことです。家庭裁判所で作成される調停調書・和解調書は、すべて債務名義の書類に該当します。

公正証書は債務名義ではないものの、「強制執行認諾文言」の記載がある場合は例外です。公正証書内に「強制執行認諾文言」と書かれていると債務名義と見なされ、強制執行が認められます。

債務名義をもとに裁判所に強制執行の申し立てをすると、元夫の給与・預貯金などの資産を差し押さえて養育費を回収できます。

参考:相手が約束を守らなかったときは|法務省

書面・口約束の場合は養育費請求調停を検討

個人的に作成した書面や口約束などで養育費の条件を決めた場合は、元夫が養育費を支払わなかったとしても強制執行はできません。まずはメールから電話、書面と、段階を踏んで養育費の支払を催促するのがポイントです。

また、家庭裁判所での調停や審判を通して取り決められた養育費が支払われないときは、家庭裁判所から履行勧告・履行命令をしてもらうことも視野に入れましょう。

履行勧告では、裁判所から元夫に養育費を支払うように催促してもらえます。履行命令の場合には従わないと「過料」と呼ばれる罰金が発生します。

ただ、催促をするのには手間がかかるため、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てた方がスムーズに進むでしょう。養育費請求調停が成立して金額が決定してもなお未払いが続く場合、強制執行ができる可能性も高まります。

まとめ

親権の有無にかかわらず、再婚したからといって養育費が減らされるわけではありません。どちらかの再婚によって養育費の金額が変更される可能性があるのは、子ども・養子の数が増えたり、年収を含めた経済状況が大きく変わったときなどです。

また、元夫が養育費の減額を希望したからといって、すぐに金額が減らされるわけではありません。話し合いから調停委員を間に挟んだ養育費減額請求調停、養育費減額審判へと、段階を追って進めるのが基本です。

元夫からの養育費が途絶えたときのために、調停調書・和解調書などの債務名義を作成しておくのをおすすめします。債務名義があると、強制執行の手続きをすれば元配偶者の財産を差し押さえられるからです。

養育費の減額・未払いへの対処法を理解し、元夫からの要求に冷静に対応しましょう。

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「読者のため」を徹底追求。データと編集力を組み合わせたコンテンツを作成します。
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