40年ほど前、日本で「ドイツ式子育て」がちょっとしたブームになったことがあるんです。そして、そのブームの象徴だったのが、「生後3ヵ月経った赤ちゃんは別の部屋に寝かせる」教育法。でも私は、個人的な意見で言わせてもらうと、日本流の「親子が揃って川の字になって寝る文化」が好き。このほうがイイ意味で“子ども中心の生活”である気がします。
たしかに「赤ちゃんでも寝室を別々にしたほうが子どもの独立心を育てる」というドイツ流の信条はわからなくもない。実際、ドイツの子どもは親離れも早く、小学生の段階で自分の進路がきっちりと決まっているケースも珍しくありません。でも、それって、じつは親側の都合も、たぶんに含まれていたりもするんですよね。
原則としてドイツでは「子ども以前に本人の生活がある」という発想が主流なんです。日本のような自己犠牲の精神は正直な話、ほぼない(笑)。小学校ひとつ取っても、親に負担が多い校風は評判も悪い。なので、学校側も「授業参観や運動会にご両親もゼヒ参加してください」とは絶対言いません。そもそもドイツには授業参観も運動会もありませんから。
もう少し「子どもの寝かしつけ」にまつわる話をすると、今でもドイツの子どもたちの就寝時間は、10歳くらいまで「夜8時」が基本。
私が小学校3年生のとき、あるクラスメイトが夜9時から始まるドラマの話をみんなの前でしちゃったんです。すると、それが「アナタは9時になっても起きてたの?」と大問題になり(笑)、ご両親が学校に呼び出されてしまいました。早く寝るのが子供にとって健康的なのは間違っていませんが、本音はやはり、夜8時以降は「オペラに行ったり映画に行ったりする大人が楽しむ時間」であることを重視した“しつけ”なのかもしれません。
一方で最近、日本では「いざか族」という、居酒屋に子どもを連れて行く家族が流行っていますよね?
ドイツでは絶対にあり得ないトレンドなんですけど、私は悪くないと考えています。ドイツなら、「夜は自分たちの時間」ということで子どもをシッターさんにあずけたりするんですけど、そこまで割り切らなくても「お酒が飲みたいなら子どもも連れて行ってあげる」という、ある意味あいまいな線引きも、場合によってはアリ!「どちらがいい」という問題ではなく、これこそが日本ならではの「子どもへの愛情の注ぎ方」だとドイツ人に自慢しちゃえばいいんですよ。