「昔から、“子は親を映す鏡”、“子は親の背中を見て育つ”という言葉があります。まさにその通りで、いくら親御さんが“○○しなさい!”“○○しちゃダメ!”と、口やかましくしつけたところで、親御さん自身ができていなければ、親の背中からそれを学んでしまうのです」
そう話すのは、子育て本作家の立石美津子さん。もちろん、これらの言葉は多くの親御さんが知っていて、その意味や大切さを理解しながらやっているつもりでも、意外と実践できていないのだそう。そこで、いろいろな例を挙げていただくと…。
「例えば、お子さんを叱る前に次のようなことをやってしまっていませんか? “食事中にテレビを観ちゃダメ!”と子どもに言いながら、自分は食事中にスマホに夢中だったり、“ちゃんと挨拶をしなさい!”と言いながら、家庭内の夫婦間、親子間でちゃんと挨拶をしていなかったり。“そんな言葉遣っちゃダメ!”と言いながら、“マジ”、“ムカツク”、“ヤバイ”など、汚い言葉を浴びせていませんか? “ちゃんと時間を守りなさい!”、“提出物をきちんと出しなさい!”と、言いながら、子どものお迎えに遅刻したり、学校の保護者の提出物を出し忘れたり。子どもはそんな親をよくみています。そして、親がしているようにするのです」(立石さん 以下同)
例を聞いて、思わずドキッとしてしまった親御さんも多いのでは? 公共のマナーでも、無意識にお手本とはとても言えない行動を見せていることが多いという。
「例えば電車のなかで子どもにお菓子をボリボリ食べさせているだけでなく、親御さんが家では絶対にしないのにこぼれた粉をパッパッと床に払い落して平気で下車したり…。ファミレスのサラダバーで食べ放題でタダだからとお皿山盛りに盛って、結局食べきれずに大量に残したり。普段は子どもに“残さず食べなきゃダメよ!”と言っているのに、それでは、説得力ないですよね(笑)。そんな親を見て育ったら、お子さんはそれでいいんだと学んでしまいます。それが積み重なって無意識に出てくる日常行動になるのです」
敬語なども、わざわざ教えなくても、親がきちんと使っていれば自然に身につくものだという。
「敬語というのは理屈で理解しようとすると、とても複雑で大人でも正しく使えない人がいますよね。しかし、小さい頃から親御さんが、“園長先生がいらっしゃったわよ”などと、きちんと敬語を使っていれば、言えなくても聞いているうちに自然に習慣化して身につくものです。逆に“園長先生が来たわよ!”と言ってしまい敬語を使っていなければ、それが身についてしまうのです。子育てしている間は、子どもが常に背中を見ているということを忘れてはいけません。その意識をもつことが、お子さんの将来につながっていくのです」
子どもはいい部分も、悪い部分も親の背中を見て学ぶからこそ、親の意識がとても大切。100の言葉で叱るよりも、親が言動でお手本を見せることがもっとも効果的なしつけなのです。
(構成・文/横田裕美子)