「親の言葉というのは、子どもにいろいろな影響を及ぼします。ただ、“このひと言を言ってしまったらダメ”、“この言葉がいい!”というような、そんな単純な問題ではないから難しいんです」(生田先生 以下同)
もちろん、子どもの存在を否定するような言葉や暴言を日々浴びせていていいはずはない。しかし、それは多くの親御さんたちも注意を心がけていて、思わず言ってしまうことはあっても、本当に自分の子がどうでもよくて暴言を浴びせている親御さんのケースは少ないという。むしろ見逃されがちなのが、子どもに愛情深い親御さんが“子どものために”と、知らず知らずのうちに言葉で子どもを追い込んでしまうケースが多いから気をつけなければならないという。
「実は、子どもの“在り様”というのは、親の言葉に規定されるところがあるんです。例えば身近な小さな例だと、子どもがケガをしたときに、親が大丈夫! 大丈夫! と言うと、子どもが安心してすぐ泣きやみ、親が大変! 大変! と大騒ぎすると、余計不安になって泣いたりしますよね? つまり、特に小さい子ほど単体でどうか? というよりも、さまざまな体験を親がどう規定するかによって子どもの“在り様”に大きな影響を及ぼしてしまうのです」
生田先生が経験したこんな事例があるそう。
「以前、ある小学校でちょっとした事故があって、結果的には大事に至らなかったのですが、念のため子どもの心のケアを…と、私がカウンセリングを担当したんです。そのときに、大事に至らなくてよかったと安心した親御さんのお子さんはまったくダメージを受けていなかったのですが、一人だけ“不安…”と、すごいダメ―ジを受けている子がいたんです。そうしたら、その子の親御さんは事故について“なんてことだ! どうしてくれるんだ!”と、ショックを受けてパニックになっていたことがわかりました。その親御さんの捉え方、言葉が知らず知らずのうちに、子どもの精神状態に影響を及ぼしていたわけです」
“このような体験の捉え方はもちろん、子どもの自分像や評価、さまざまな価値観なども、親が発したネガティブな言葉によって規定されてしまう可能性があるので、気をつけなければならない”と、生田先生は話します。
「心理療法のバイブルともいえる本のタイトルに“words were originally magic~言葉はもともと魔法だった~”という言葉があるんですね。言葉は魔法、その言葉を使ってカウンセリングもするし、人は元気を出したり変わっていったりするわけですね。だから、言葉の影響というのはやっぱり大きい。でも、だからこそ親の影響を受けやすい子どもには、“悪い魔法をかけない!”ということが大事。“言葉は魔法なんだ!”ということを念頭に置いて言葉かけをしていると、お子さんもどんどん違ってきますよ!」
せっかく魔法をかけるなら、わが子には“悪い魔法”ではなく、“いい魔法”をかけてあげたいもの。ぜひ、今日から実践してみてください!
(構成・文/横田裕美子)