「親として言ってはいけない言葉、子どもが傷つく言葉というのは、たいがい“言い合いをしている悪循環のなかで飛び出した言葉”がピックアップされるんです。だから気をつけなければなりません」(生田先生 以下同)
□例えばこんなケース
親「ちゃんとしなさいよ!」
子「うるせぇ、クソババァ!」
親「アンタがだらしないんでしょ!」
子「お前のほうこそ親失格だろ!」
親「アンタの育て方間違えたわ!」
子「なんだと! こんな家に生まれてこなきゃよかった」
親「アンタなんか生まれてこなきゃよかった」
「まさに止まらない悪循環ですよね? もはや相手の存在に対する言葉ではなくて、“売り言葉に買い言葉”のように言葉に対して返しているうちにエスカレートしていくんです。そして、たいてい自分が言ったことは覚えていなくて、相手に何を言われたかしか覚えていないものなんです」
では、この悪循環のなかで何が起こっているのか?
「このやりとりをどこで区切るか? これを専門用語で“パンクチュエーション”と言うのですが、それによって互いの因果関係が逆になっているんです。つまり、親は“クソババァ”と言われたから、“親失格”と言われたから、“生まれてこなきゃよかった”と言われたからと、思っているし、子は“だらしない”と言われたから、“育て方間違えた”と言われたからと、相手の言動が原因で自分がその結果ととらえてしまう。しかも、互いに正論なので、そのケンカは終わらないんです」
では、この悪循環はどうしたら終わるのか?
「どちらかが意図的にこの悪循環を断ち切るしかないんです。つまり、この構図に気づいた人、今まさにこの記事を読んでくださっている親御さんがいい意味で自分をあきらめて、変わるしか方法はないんです。正論を言ってもダメならば、やり方を変えなければならない。しばらく黙って見守ってもいいですし、言い方を変えてみてもいいでしょう。いろいろ違ったアプローチをしてみるチャンスを得たと思えばいいんです。悪循環を断ち切る勇気こそがお子さんへの暴言、お子さんからの暴言の回避につながるのですから」
親子関係は、特にこじれやすいという。
「親御さんは、どうしても“親だから、子どものために!”という使命感や責任感のようなものもあるので、正論を言い続けてしまうんです。しかし、相手にも言い分はありますし、正論だけではうまくいかないのが人間関係。正論で相手との関係がうまくいかないときは、自分の考え方や接し方を少し変えてみることが悪循環から抜け出す唯一の方法なのです」
“負けるが勝ち!”。昔の人の言葉の本質は、もしかしたらここにあるのかもしれませんね。
(構成・文/横田裕美子)