予期せぬ子どもの転落事故。多発する盲点とは?

第2回 近年、多発している子どもの事故の盲点と対策とは?
近年、“子どもがマンションから転落”という事故のニュースをよく目にします。東京消防庁によると、平成23~27年の約5年間で東京都内だけでもマンションなどのベランダや窓から転落し、救急搬送された5歳以下の子どもは114人にのぼるという。多発する転落事故の原因や盲点とは? さらに、それだけではない身近な子どもの転落事故の事例や防止策について、子どもの危険回避研究所の所長・横矢真理さんにお話を伺いました。

「マンションのベランダなどの高所からの転落は、生命に危険を及ぼす可能性が高い事故です。多くは、エアコンの室外機や椅子、布団などが置いてあって、それを踏み台にして身を乗り出してしまうケースです。エアコンの室外機の位置や、踏み台になるような物を置かないなど、注意が必要ですね」(横矢さん 以下同)

さらに、ベランダからの転落事故が起きやすい状況についても把握しておくことが大事だという。

「幼児の場合、お子さんが寝ている間に親御さんがちょっと買い物などに出た間に、目を覚ました子どもがベランダからお母さんを探していて転落するケースは多いんです。なので、ベランダに踏み台になる物を置かないだけでなく、ベランダに出られないようにしっかり鍵をかけるなど、幾重にも危険回避の備えをしておきましょう!」

実は、マンションの転落事故は、幼児のみならず、高さの危険への認識があるはずの小学生の事例も多数報告されている。そこに潜む盲点とは?

「小学生になると、高さがある種のスリルとなり、さらに友だち同士で“オレのほうがこんなこともできる!”などと張り合ったりという心理から遊びがエスカレートしてしまうことも。一人ではしないようなことも友だちと一緒だとやってしまったりするんです。もう小学生だからと安心せず、きちんと普段から危険についての認識をお子さんと共有しておきましょう」

また、昭和60年以降から高層マンションで子育てする家庭が増えたことにより、子どもが高所の怖さを感じにくくなる“高所平気症”の子どもが増えているという。福島学院大学の織田正昭教授(福祉心理学)によると、子どもが高い場所が危険かを判断する感覚は、4歳ごろまでに大人の約8割ほどのレベルまでに達するそう。しかし、この時期を高層階で過ごす子どもが多くなり、子どもは自分の目の高さを基準に地面との距離を把握し高いかどうかを判断するため、地面が見えない高層階では“高い場所が怖い”という感覚が育ちにくいのだそう。

「こういった指摘もあるので、高層階にお住まいの方は、お子さんが予想もしないような危険な行動をとる可能性もあるということをしっかり把握して、注意してください」

マンションからの子どもの転落事故

子どもの転落事故は、もちろん高所からの転落だけではない。日々の生活のいたるところに盲点があるから気をつけなければなりません。

「赤ちゃんはベッドやソファからの転落、幼児はベビーチェアや自転車の補助椅子からの転落、階段からの転落など、さまざまな危険が考えられます。転落事故の場合、危険回避の対策として、ベルトのあるものはしっかりベルトをする、自転車に乗る際は子ども用ヘルメットを着用させるなど、その心がけだけでも、かなり効果があると思います。そして、子どもは日々成長し、行動範囲が広がっていくこと、知恵が働くようになること。つまり、昨日できなかったことが今日はできているかもしれないということを常に念頭に置いておくことを忘れずに!」

子どもの成長はとても喜ばしいこと。しかし、成長したからこその危険が潜んでいることも、きちんと認識しておくことが大事ですね!
(構成・文/横田裕美子)

お話を伺った人

横矢真理
横矢真理
子どもの危険回避研究所・所長
平成11年より、「親子で生きる力を養う」ためのサイト「子どもの 危険回避研究所」(http://www.kiken-kaihi.org/)を主宰・ 運営し、子どもに関わる事故・犯罪・災害・虐待・環境問題など の情報を提供。全国各地での講演活動、新聞・雑誌への寄稿 など、幅広いフィールドで「生活安全教育」の普及活動を続けている。
平成11年より、「親子で生きる力を養う」ためのサイト「子どもの 危険回避研究所」(http://www.kiken-kaihi.org/)を主宰・ 運営し、子どもに関わる事故・犯罪・災害・虐待・環境問題など の情報を提供。全国各地での講演活動、新聞・雑誌への寄稿 など、幅広いフィールドで「生活安全教育」の普及活動を続けている。