「子どもの自殺の大きな特徴は、あまり悩まず、突然であることです」と言うのは、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科の碓井真史教授。
若者の場合は深く悩むことが多いそうだが、実は、「悩んでいる間は、自殺はあまり起こらない」という傾向が見られるという。
「悩んでいるほうが良いのです。子どもの場合は、まだ悩む力がないから、突然自殺してしまうのです」(碓井先生 以下同)
突然起こることだけに、子どもの自殺のほうが、大人の自殺よりも予防が難しいそう。つまり、子どもの自殺の場合は、もっと前の段階での予防が必要になるということだ。
●子の自殺を防ぐには、親がまず幸せになることが必要
では、具体的に親はどうすれば良いのだろうか。
「自殺の危険性の高い子の背景には、『自殺の危険性の高い親』がいることがわかっています。『何をしてもつまらない』『結婚生活をやめたい』『仕事が嫌だ』といったネガティブなことばかり口にする親の影響が子どもに及ぶのです」
そのため、子どもの自殺を防ぐ根本には、まず親が幸福感を持つことが大切になる。
「また、自殺してしまう子には、自分が“かけがえのない子”というイメージがわかない子、『自分なんていなくても誰も困らない』と思っている子が多いです。ですから、何でもないときに日頃から『自分は大切な存在なんだ』と思わせる声掛けをしていくことも必要です」
自殺してしまう子の親は、カッとしたときに「あんたなんていなければ良い!」「生むんじゃなかった!」と言うなど、子の存在意義を否定してしまう行動を取るケースが少なくないそう。
「子どもが大切だと思う気持ちをうまく言葉にできないのなら、『おばあちゃんが、お前をいちばんかわいいと言っていたよ』と、間接的に伝えることも効果的です。ウソはいけませんが、少し演出が入っていても良いのです。家族の中でいかに愛されているかを感じてもらうことが肝心なのです」
まず親が幸せになる。そして、家族みんなで幸せになる方法を一緒に考えていく。そうすることで、子どもの「なんとなく死にたい気分」は生まれにくくなり、それが自殺予防につながるようだ。
(田幸和歌子+ノオト)