これはどういう状態なのか。教育研究所ARCS所長の管野淳一先生は言う。
「『どこがわからないかわからない』という言葉には、2種類あります。ひとつは知識を詰め込みすぎていて、頭のなかが整理されていない場合。これは学校や塾の先生と話したり、試験を受けたりすると、自分の穴が見えてくるはずですので、まったく心配ありません」
ただし、問題は、もうひとつの「ただの言い訳」である場合だそう。
「親に『なんでできないの?』と責められ、『だって、よくわかんないんだもん』『何がわかんないの?』という流れで言う場合、親は勉強の仕方がわからないのではないかと不安になりがちです。でも、子どもの言うことを真に受ける必要はありません。単に勉強量が不足しているだけのことが多いからです」
管野先生いわく、「そもそも親が、子どもの苦手を克服する必要があると思っていることに問題がある」そうだ。
「人は本来、誰でも得手不得手があるものです。実際、現在の社会情勢や2020年からの大学入試改革の方向からいっても、これからの時代はどれもまんべんなくそこそこできるよりも、絶対の得意領域を持つことのほうが奨励されるんですよ」
まずは「苦手を克服しなければいけない」という考え方を変え、何らかの得意分野を伸ばすことを考えること。すると、そこから関連する他教科への関心も広がることがあるという。
●「子どもの苦手」を親が決めつけてしまわないこと
では、子どもが「わからない」という壁にぶち当たったとき、親はどうすれば?
「まず教科書の最初に出てくる原理原則に戻って考えさせましょう。さらに、子どもに簡単な公式や例題などを説明させること。子どもが先生役、親が生徒役になるなど、ゲーム感覚でやってみると、親は上から目線にならず、子どもも委縮せずにすみますよ」
また、親が「ウチの子は〇〇が苦手」と決めつけるのもNGだそう。
「よく親が言う『ウチの子、算数ができなくて。ウチは算数のできない家系だから』というセリフがありますが、これは根拠のない偏見ですから、口に出してはいけません。子どもの苦手を親が決めつけることで、子どもは必要以上に苦手意識を募らせてしまいます」
子どもの「苦手」ばかりに目を向けず、まずは好きなこと、得意なことに目を向けてみる。自信を持たせることが、苦手克服の第一歩かも。
(田幸和歌子+ノオト)