現住建造物等放火罪とは?極めて重い刑罰を軽くする方法も解説

現住建造物等放火罪とは?極めて重い刑罰を軽くする方法も解説

現住建造物等放火罪に関するQ&A

Q1.現住建造物等放火罪とは?

現住建造物等放火罪(刑法第108条)が成立するには、以下の構成要件を全て満たす必要があります。

人が住居に使用している、または人がいる建物等への放火

現住建造物等放火罪は、人が実際に住居として使用しているか、もしくは人が実際にいる建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑へ放火した際に成立します。

放火当時に人がいなくても、日常的に住居として使用しているのであれば、本要件を満たします。

放火行為

放火行為とは、目的物を焼損させる危険性を有する行為のことをいいます。

家を焼損させる目的で家に放火するような直接的な放火行為だけでなく、家を焼損させるために家の隣の物置等の媒介物に火を付けるような場合も「放火」となります。

焼損させる

「焼損」とは、火が媒介物を離れ、その火が独立して燃焼を継続できる状態に達することをいいます。

一般的には、火が激しく燃え盛り消防車による消火活動が行われているような場面が放火罪の成立場面であるとイメージするかもしれません。

しかしながら、テレビニュースで取り上げられる被害は大規模な場合が多く、大規模に燃え盛っていないと放火罪が成立しないわけではないのです。

燃えている範囲はごくわずかであっても焼損したといえるケースはありますので、放火罪を軽く考えないようにしましょう。

故意

本罪が成立するには故意が必要です。平たく言うと、故意がある場合とは「わざと」放火行為をして目的物を焼損させた場合です。

これに対し、「わざと」ではなく「不注意で」目的物が焼損してしまった場合は放火罪ではなく失火罪(刑法第116条)による処罰対象となります。

ライターやマッチの処理がしっかりできておらず不注意で目的物に火が燃え移ってしまうことは日常的にありうるでしょう。

わざと焼損させた場合と不注意で焼損させた場合を同じように処罰するのは均衡に欠けますので、不注意の場合は失火罪の処罰対象となります。

Q2.現住建造物等放火罪は未遂でも有罪?

現住建造物等放火罪は未遂でも処罰されます(刑法第112条1項)。

現住建造物等放火罪はそれ自体危険性が高い抽象的危険犯であるため、実際に焼損しなくても処罰されるのです。

たとえば、家屋を燃やそうと考え家屋の近くにあった古紙に火をつけたものの、古紙が燃えただけで家屋に火が燃え移らず焼損するに至らなかった場合は未遂にとどまるでしょう。

Q3.現住建造物等放火罪で逮捕されたときの対処法は?

現住建造物等放火罪でご自身やご家族が逮捕されてしまった場合、逮捕後の流れや取調べの際の注意点をしっかりと把握しておくことが大切です。

現住建造物等放火罪の法定刑は重いので、何も考えずに逮捕や取調べを進めてしまうと想像以上に重い刑罰が科せられる可能性があります。

①逮捕後の流れ

逮捕されると最大で72時間、家族であっても面会は許されません。

逮捕後は、48時間以内に、事件が警察官から検察官に送られます。

そこから24時間以内に、検察官が、被疑者を引き続き身体拘束するのか、いったん釈放するのかを決めます。

現住建造物等放火罪は重大犯罪ですので、犯行が疑われる以上、通常は勾留請求が行われます。

②取調べでは正直に話すこと

刑罰を科せられることへの恐怖から取調べで嘘をついてしまう人がいますが、取調べでは正直に話すことが大切です。

一度嘘をつくと、その嘘を隠し通すためにさらに別の嘘を積み重ねる等して、話の辻褄が合わなくなることがあります。

このように罪責を免れるために虚偽の弁解をしていると「反省していない」と受け取られてしまい、余計に処分が重くなる可能性が高くなります。

③被害者と示談をする

科せられる刑罰が決まる前に被害者との示談が成立したことは、刑罰を軽くすることに有利に働く場合があります。示談できるのであれば被害者と示談をしましょう。

被害金額が莫大で示談不能な場合でも、真摯な謝罪や見舞金の支払いなどをしておくと有利な情状として取り扱われ、量刑の軽減につながります。

まとめ

「単に火を放っただけ」という軽い気持ちで放火行為をする人がいますが、現住建造物等放火罪の法定刑は殺人罪と並ぶほど重いものです。

万が一現住建造物等放火罪に該当する行為をしてしまった場合は、早急に弁護士に相談しましょう。

行為の悪質さや被害の大きさによっては無期懲役や死刑になることもあります。

弁護士と今後の方針を検討したり示談交渉を進めたりすることで、少しでも刑が軽くなるよう最善を尽くしていきましょう。

監修者:萩原 達也弁護士

ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
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