●ほめて育てたのに、なぜか自己肯定感が低い息子
「マニュアル女の私にとって、育児雑誌はバイブル。これに従って育児していれば、失敗はないと思っていました」そう語るのは、都内に住むAさん(43歳)。私立高校に通う高校1年生の1人息子・Bくんを持つお母さんだ。
人当たりも良く、社会性に富み、普段は元気に学校に通っているというBくん。だがその一方で、時として気分がふさぎ、朝から頭が痛い…などと言って学校を休むこともあるそうだ。
「1人っ子なので、祖父母や親せきからもかわいがられて、欲しいものは何でも買い与えましたし、育児雑誌を信用して、とにかく怒らないように“ほめる育児”を徹底して実践してきました。なわとびや鉄棒、お手伝い…ちょっとしたことでもほめるように心がけていましたし、息子も穏やかないい子だったので、自分の育児に自信はありましたね。スーパーなどで“ふざけるんじゃない!”と怒鳴りながら子どもの頭を殴るお母さんを見て“ひどいわ…”なんて思ったり。叱らなくてもこんなにいい子に育つのにって。ところが、小学生の頃は無邪気で良かったんですけど、思春期に入った中学3年あたりから、急にネガティブになってきたんです。学校で少しのミスを先生に指摘されたくらいで“自分はクズだ”“生きている価値がない”などとつぶやくようになって…。あれだけほめて大切に育ててきたにも関わらず、あまりにもネガティブで自己肯定感が低いので、どうしたものかと本気で悩んでいます」(Aさん 以下同)
Aさんの話によれば、「友だちに僕が好きなアニメの悪口を言われた」「先生に理不尽なことで怒られた」と些細な理由をつけては、1カ月に2、3度学校を休むことが多くなってきたという。
「1日休むと気持ちが切り替わるみたいなので、今は休ませていますが、このまま不登校にならないか…いつもビクビクしています。主人には“お前が甘やかせてばかりいるからこんなことになったんだ。何といっても学校に行かせなさい”と言われるし、やっぱり、“あまり叱らずにここまできてしまったことが原因で息子が打たれ弱くなってしまったのかな?”という思いはぬぐえませんね。この先、社会に出て、自立していかなければならないのに、就職してもきちんと仕事が勤まるのかどうか、不安でなりません。私の育児は間違っていたのか? 育児をもう一度やり直したい…そう思ってしまうこともあります」
はたして、ほめる育児は間違いなのか…。保育士おとーちゃんとして、子育てカウンセラーを務める須賀義一氏に聞いた。
「叱るばかりじゃなく、ほめることが大事なんですよ…という考え方自体は間違っていません。でも、ほめるということは必ずしも万能ではなく、結果をほめるだけではかえって自己肯定感を下げてしまうこともあります。ほめる時は、結果だけではなく、頑張ってきた過程をほめることが大切なのです。もっと言えば、お母様方には、ほめるよりも“認める子育て”をして欲しいと願います。子どもは、大好きな親に、ありのままの自分を認めてもらい、受け止めてもらうことで“自分はこのままでいいんだ”という自己肯定感が育まれていくのです。子どもが健やかに成長していくために一番大切なのは“認める子育て”であると私は考えます」
ほめる子育て改め、その子自身のありのままの存在を“認める子育て”を…。須賀氏いわく、思春期を迎えた今からでも十分間に合うとのことなので、今すぐ実践してみては?
(取材・文/吉富慶子)