「算数の力というのは、計算ができることだけではありません。物の個数、長さ、重さ、お金の計算など、生活ととても密着した科目なのです。つまり、幼児期は、計算式を解かせることにスポットを当てるのではなく、算数を理解する土台となる“概念”をしっかり生活のなかの実体験を通して積ませ、頭に入れることが大切なんです」
そう話すのは、子育て本作家の立石美津子さん。つまり、算数ドリルの数字だけのやりとりでは、算数力はしっかり身につかないそう。
「例えば、“3”の数字を見て、頭に3つの物体を思い浮かべることができるようにするには、まず目の前に具体物が必要になりますよね? 実は、この数字をイメージできる力こそが算数力の土台となるのです。つまり、計算問題はやったことがなくても、“3枚のクッキーと4枚のクッキーを合わせて7枚になる”ということが、指を使ってなんとなくわかっていれば、それでいいのです」(立石さん 以下同)
よく、小さい子が計算問題を解いているときに、指を使って数える光景を目の当たりにする。つい大人は、“手を使わないの!” と、頭のなかで計算するように促してしまいがちだが、それを決して禁止してはいけないと立石さんは話します。
「指はまさに“天然の計算機”です。どんどん使わせましょう! だんだんと数字を聞いて頭に指の本数が思い浮かぶようになったら、自然に使わないですむようになります。手先が器用になる5歳くらいから数量が目に見て操作できる“そろばん”や“百玉そろばん”を家に置いておくのもおすすめです」
子どもの数の概念を確かめるために、立石さんがよく行う方法があるそう。
「たくさんのおはじきをバラバラっと机の上に出し、“何個あると思う?”と子どもたちに質問します。子どもたちは、それぞれいろんな数を言うのですが、それがありえない多さだったり、少なさだったりするんです(笑)。つまり、まだ数の概念があいまいな状態ということ。そこから、数えていくことで数字と物のイメージが一致し、その経験を積むことで少ない数から多い数までイメージできるようになります。また、数え方も1個ずつ数えたあとに、10個をひとかたまりのグループにして数えることを見せることで、大きな数の概念も学べるわけです」
算数という教科は、概念の土台が身についてこその応用なので、一度“苦手意識”を持ってつまずいてしまうと、学年が上がるごとにますます膨れ上がってしまい、取り返しがつかなくなるので気をつけなければならないという。
「小学校1年の夏休みくらいまでは計算問題ができれば点数が取れるので、ほとんどの子は算数が嫌いではないのですが、文章を読んで状況をイメージし、式を立てる問題が増えてくる2年生になると、計算力しかない子はだんだんわからなくなります。実体験がないのでイメージできないのです。“算数力”をつけるためには、幼児期に“算数の学習につながる体験”を積んでいることが大切です。それが、算数に強い子と弱い子の違いなのです」
算数の力を育む秘訣は日々の生活のなかにあり! ぜひ、幼児期に数にまつわる実体験をたくさん積ませてあげましょう!
(構成・文/横田裕美子)