犯罪から子どもを守るための心構え

第1回 夏休みは危険 わが子を犯罪から守るために
肌の露出が多くなる夏は、一年のうちで犯罪が増えるともいわれる季節だ。とくに、夏休みは子どもだけで外出する機会も多くなりがちに。子どもを犯罪被害から守るために保護者は何ができるのだろう? 

犯罪から身を守るコツを伝えるプロジェクト「うさぎママのパトロール教室」主宰であり、安全インストラクターとして多数の講演やセミナーの講師を務め、メディアにも出演するカリスマ講師・武田信彦さんに聞いた。

公園

●時間・場所よりも「ひとりになるところ」が要注意

2014年における13歳未満の子どもの犯罪被害件数は、全国で2万4707件(※1)、そのうち、強制わいせつの被害者数は1095人(女子968人、男子127人)、略取誘拐の被害が109人(女子86人、男子23人)となっている(※2)。なお、数字に表れない「被害届けが出されていないケース」も相当数あるといわれているため、油断は禁物なのだ。

「13歳未満の子どもに対する犯罪被害を見ると、午後の時間帯の発生が多い傾向にある一方、午前や深夜などほぼすべての時間帯のあらゆる場所で被害が発生しています。つまり時間や場所は関係ないということ。最もリスクが高まるのは、“ひとりになるところ”です」(武田さん 以下同)

子どもが被害にあった略取・誘拐の場所別発生状況を見ると、家のまわりや通学路などの道路上をはじめ、公園、駐車場などの屋外が圧倒的に多い。つまり、犯罪被害は日常生活のあらゆる場所で起きうるということ。保護者がふと目を離した瞬間や、子どもが友だちと別れた後のわずかな時間にも危険と遭遇してしまう可能性があるのだ。

「習いごとへ向かうとき、近所の友だちと別れて帰宅するまでなど、子どもがひとりになりやすい機会を知り、しっかり予防することが重要です。子どもたちのライフスタイルや地域性によっても異なってくるので、時間帯や場所にとらわれずに対策を行ってください」

公園で一人で遊ぶ子ども

●ひとりにしない=常に親と一緒に行動するではない

子どもたちが犯罪被害に遭わないための最大の予防ポイントは、“ひとりにならない”こと。

「子どもひとりの力では、大人の体力や悪知恵に到底かないません。家族、友だち、きょうだいなどと行動することで“ひとりになる”瞬間を減らすことが安全の基本。不特定多数が集まる商業施設などでも、思いがけずひとりになる瞬間があるため、注意が必要です」

「じゃあ親がずっと子どもの行動を見張っていなきゃいけないの?」「小学生ともなると行動範囲が広がるのでそんなの無理!」と負担に思ってしまう保護者もいるだろう。だが、“子どもをひとりにさせない”とは常に行動を共にするという意味ではない。

「周囲に誰もいない“ひとり”の状況を避ける、ということです。『昼間でも人気のない道は歩かないようにしよう』『夕方以降は遠回りになっても明るく人通りやお店の多い道を選んで歩こうね』と日頃から子どもに教えて、しっかり実践させましょう」

「自分で自分を守る」意識をもつこと。自分の周りに対して、常に意識を向けておく習慣を身につけさせる。それだけでも犯罪に巻き込まれるリスクはグッと下がるのだ。

「夏休みは、子どもだけでお留守番やお出かけをする機会も増えるので、“ひとりになる”が多くなる時期。家のまわりや近所でも『ここは大丈夫』と油断せず、子どもに犯罪が忍び寄る“隙”をなくすよう、親が率先して気をつけていきましょう」
(阿部花恵+ノオト)

※1 国家公安委員会・警察庁「警察白書」平成27年版
※2 法務省「犯罪白書」平成27年版

お話をお聞きした人

武田信彦
武田信彦
1977年生まれ。安全のコツを伝えるプロジェクト「うさぎママのパトロール教室」主宰。安全インストラクターとして全国で講演やセミナー講師を多数務める。
1977年生まれ。安全のコツを伝えるプロジェクト「うさぎママのパトロール教室」主宰。安全インストラクターとして全国で講演やセミナー講師を多数務める。