親の財布からお金を盗む子・その心理と背景は?

第2回 親の財布からお金を盗む子の心理とは?
「財布に入っていたはずのお金がない…ひょっとしたらわが子が盗っているのかも…」親として、もしもそんな悲しい場面に直面したら? そこで、家族間の問題に定評がある心理カウンセラー・三枝みき氏に取材。子どもがなぜ親のお金を盗むのか…その心理と背景について分析してもらった。

●親が知るべき3つの法則とは?

まず、子どもが親のお金を盗む場合、いくつかのケースが考えられるという。

その1.欲しいものがあるけど、親に言っても買ってもらえない、遊びに行くのにお小遣いが足りないが、言ってももらえないと思っている。
(親子のコミュニケーション不足が原因)

その2.イジメによるカツアゲ(恐喝行為)など。
(親に言うことで、事態がかえって悪くなってしまうかもしれないという恐怖で、子どもは思い悩んだ末に身近な親の財布からお金を盗ってしまう。大好きな親に余計な心配をかけたくない、悲しませたくないという心理が働いている)

その3.親の愛や関心がほしい。
(1も広義の意味ではこれにあたるが、子ども自身が無自覚な場合が多い。親が自分に関心を持っていない、愛されていないと思いこんでいて、どうにかして愛や感心が欲しいという心理から盗む行為に…。ほとんどのケースが無意識に“親に気付いてほしい””自分のことを見てほしい”と願っている)

お金を盗む

「お金は人間にとってエネルギーであり、愛にもつながります。心理学的に言えば、お金を盗む=愛を盗む、奪うという意味合いに受け取ることができ、その子どものなかに”親の愛や関心がほしい”と願っても、決して得られない”という感覚があることを示します」(三枝氏 以下同)

それでは、もしも盗んでいることがわかったら…親としてどう対処するべきなのか。正しい対処法、やってはいけない対処法とは?

「まず、頭ごなしに叱るのはNG。その子にはその子なりの理由が必ずあるはずなので、それをとことん聴いてあげることが大事です。そしてその過程で、子どもに対して理解が足りなかった、話を聴いてあげていなかったなど、親の方に落ち度があったならば、子どもと真摯に向き合い、謝ることが理想的です。また、ごくまれに“子どもの友人が犯人だった”というケースもあるようなので、“お前がやったんだろう”と決めつけてかかるのも良くないですね」

もしわが子が犯人であったとしても、決して「またやるだろう」という目で見てはいけないという。

「間違ったことをしたとしても、お子さんを信じてあげて下さい。一番よくないのは、見て見ぬふりをすること。親がお子さんに関心を持っていることを、しっかりと伝えてあげてください。それから、子ども的には“他人から取ったら犯罪だけど、家族の財布からならそうじゃない”という感覚もあると思います。ある種の甘えでもありますが、これは普段から親子双方に“親(子)の物は自分の物”という感覚があるのではないでしょうか。ですから普段から“これはお母さんのもの、これはあなたのもの”というように線引きをしておく、不必要に子どものものに触らず、管理は自分でやらせる、たとえ家族であっても個人であり、必要以上に干渉し過ぎず信頼をする…というスタンスは、普段から大切にしてほしいと思います」

まずは叱らずに子どもの言い分をしっかりと聞く、親に落ち度があったなら素直に謝る、普段から、親と子の持ち物の線引きをしっかりとしておくこと。これさえ肝に銘じておけば、いざ問題に直面しても、冷静に対処できるのではないだろうか。

(取材/文・ワタベマキ)

お話をうかがった人

母娘カウンセラー
三枝みき
カウンセリングサービス・心理カウンセラー
親のような優しさで包み込み、直感とユーモアでお客様を笑顔に…。 子どもの自傷、強迫性障害がきっかけで心理学を学び始め、家族の問題、母子関係、子育て、対人関係、コミュニケーション、罪悪感、自己嫌悪、自己否定、自己攻撃、夫婦問題、嫁姑問題、喪失などを扱う。 うつ病による自死で家族を亡くした経験もあり、心の病気を抱える家族のサポートについても得意とする。
親のような優しさで包み込み、直感とユーモアでお客様を笑顔に…。 子どもの自傷、強迫性障害がきっかけで心理学を学び始め、家族の問題、母子関係、子育て、対人関係、コミュニケーション、罪悪感、自己嫌悪、自己否定、自己攻撃、夫婦問題、嫁姑問題、喪失などを扱う。 うつ病による自死で家族を亡くした経験もあり、心の病気を抱える家族のサポートについても得意とする。