では、どうすれば子にとって憂鬱なタスクをお楽しみに変えることができるのだろう? 三姉妹を育てる父であり、K.I.T(金沢工業大学)虎ノ門大学院主任教授の三谷宏治さんに話を聞いた。
●まずは楽しさや競争を演出しよう
「子どもにお手伝いをさせる場合は、ともかく楽しいところからスタートさせましょう。できたらご褒美にシールをあげる、きょうだいがいれば競争させるなど、子どもが小さいうちはちょっとした工夫で楽しさを演出してください」(三谷教授 以下同)
もちろん、最初からうまくはいかない。洗濯物を畳ませたらグチャグチャ、部屋の掃除をさせたのに片付かなくてイライラ。そんな「自分がやったほうが早いし楽」な状態を、まずは親自身がグッと耐えることが出発点だ。
「子どもたちの将来を考えたとき、お手伝いをさせることは効果ある投資なのです。最初のうちは、親はガマンが肝心。そしてもうひとつ、お手伝いを続けさせる上で大切なのは“任せる”ことです。責任と権限を明確にして、仕事として子どもにちゃんと任せましょう」
具体的には「週に1回は庭掃除をしてもらう」と約束したのなら、いつやるかやどうやるかは子ども本人の意思に委ねよう、ということ。“庭掃除係”としての権限を与え、子どもの裁量に任せる。そうすることで、自己決定感と有能感が高まるのだという。
このとき、「いつまでたっても動かないから」と親がしびれを切らして代わりにやってしまうのはNG。そうした先回りや過干渉が続く限り、子どもの自主性や創意工夫は育まれない。自分で動くまで、根気強く見守ろう。
●いずれは家族全員で家事を分担できるように
朝のゴミ出し、玄関の靴並べ、郵便物取り、食器の片付け、洗濯物を畳む作業など、子どもが責任を持ってやれるタスクはいくらでもある。まずは簡単なひとつの係からスタートして、年齢が進むにつれて少しずつ範囲を広げていこう。最終的には家族全員で家事を分担できるようになるのが理想だ。
「お手伝いをすることで、子どもは自立的に考え動けるようになっていきます。その経験は学力向上にも必ず役立つはず。お手伝いも勉強も、アメとムチで“やらせている”限り悪循環から抜けられません。しっかり、そして楽しくお手伝いを続けることで、子どもの能力を伸ばしていきましょう」
(阿部花恵+ノオト)