3、接触事故の場合の注意点
接触事故直後は、気が動転しているかもしれませんが、次のことに注意してください。
(1)すぐに物損事故と判断しない
接触事故が起きたものの、特段身体の痛みを感じない場合、物損事故として処理することを考える人が少なくありません。
怪我がなければ、あえて人身事故で処理する必要性を感じないかもしれません。
警察からも、物損事故の処理で手続を進める旨の話をされる場合もあるでしょう。
しかし、先ほどのとおり、接触事故直後は、気が動転しているため、痛みを感じられない場合があります。後から痛みが出てくる場合もあるのです。
万が一の場合に備え、少しでも心配な点があれば救急車を呼ぶか、事故当日に病院で診察を受けるようにしましょう。
(2)後日痛みが出てきた場合は、早急に人身事故への切り替え
事故当日は痛みを感じなかったものの、後日痛みが出てきた場合は、すぐに病院で診察を受けましょう。
そして、早急に人身事故への切り替え手続をしましょう。
事故から日数が経てば経つほど、人身事故への切り替えに不自然さが出てきます。痛みを感じたら、早急に動いていきましょう。
(3)事故現場で示談をしない
接触事故が発生したとき、事故現場で加害者から示談を持ちかけられる場合があります。
事故現場で簡易的な示談書をメモ書きで作成したり、少々のお金を加害者が支払ったりすることで、示談を持ちかけられることもあるでしょう。
事故現場で示談をしてしまうと、今回の接触事故の件はその示談で完了となり、それ以降損害賠償請求をできなくなる可能性もあるので、注意が必要です。
以下では、接触事故の場合に、加害者から現場で示談を持ちかけられる理由について見ていきましょう。
①大ごとになる前に終わらせたい
加害者心理としては、接触事故を起こしてしまったものの、大ごとになる前に事故の件を終わらせたいという気持ちがある傾向にあります。
接触事故の件を保険会社に報告すると、事が大きくなる場合もあるでしょう。
大ごとになる前に終わらせたいという心理から、その場で被害者と示談してしまいたいという気持ちが湧いてきます。
②周囲に事故の存在を知られたくない
加害者としては、接触事故の存在を周囲に知られたくないという心理もあります。
事故を起こしたことが発覚すれば、周囲からプラスのイメージを持ってもらえることはなく、多くの場合はマイナスイメージを持たれます。
加害者が大企業の役員であったり、それなりの立場にあったりする場合、周囲に事故の存在を知られることは大きなダメージです。
事故現場で示談してしまいたいと考えても、不思議ではありません。
③事故の存在により自分の保険の等級を下げたくない
事故の存在を保険会社に知られたくない理由の1つが、事故発生により加害者自身の保険の等級が下がるという点が挙げられます。
保険の契約内容にもよりますが、事故を起こし被害者の損害賠償のために保険を使えば、加害者側の保険の等級は下がるのが通常です。
④ 免許の点数に影響を与えたくない
事故の内容によっては、免許の点数に影響が出る場合もあるでしょう。
自身の免許の点数に悪影響を与えたくないがために、事故現場で示談しようとする加害者もいます。
(4)警察には必ず通報する
①通報しない場合は道路交通法違反となる
接触事故が発生したら、警察には必ず通報しましょう。
接触事故が発生したにもかかわらず警察に通報しないと、道路交通法違反となります。
仮に、駐車場での接触事故であっても、警察への届出義務が発生する場合があります。
通報すべきか判断がつかない場合は、警察へ通報しておくようにしましょう。
②通報しない場合は交通事故証明書を発行してもらえないこともある
警察に通報しておかないと、そもそも交通事故証明書を発行してもらえないことがあります。
交通事故証明書は、
事故の場所や時間
加害者と被害者の名前
など、事故の詳細を証明する重要な書類です。
交通事故証明書が発行されていないと、そもそも事故の存在自体を疑われる可能性すらあります。
交通事故証明書を発行してもらうためにも警察へ必ず通報しましょう。
(5)犯人が逃げた場合は犯人の特定を早急に行う
犯人が逃げた場合、犯人の特定を早急に行う必要があります。
犯人が誰かわからないと、接触事故によりあなたに損害が発生したとしても、加害者に対して損害賠償請求をすることができません。
万が一、加害者が逃げた場合は、
加害者の車のナンバープレート
ドライブレコーダー
防犯カメラの映像
などを手掛かりに、犯人の特定を急ぎましょう。
4、接触事故における過失割合の具体例
接触事故の場合、追突事故のように、どちらか一方のみが悪い場合もあります。
しかし、なかには加害者側・被害者側双方に過失(落ち度)があるケースも考えられるでしょう。
ここでは、車同士の接触事故における代表的な過失割合について、紹介します。
(1)当方:青信号、相手:赤信号での車同士の接触
たとえば、当方:青信号、相手:赤信号での直進車同士の接触事故の場合、信号の状態からして当方に落ち度がないことが多く、原則として当方の過失は0となります。
当方の過失がゼロの場合、損害賠償額の100%を加害者側が負担することになります。
(2)当方:黄信号、相手:赤信号での車同士の接触
次に、当方:黄信号、相手:赤信号での直進車同士の接触事故の場合です。
相手は赤信号ですが、当方は黄信号であり青信号の場合とは異なる状況です。
この場合、当方にも2割程度の過失が認められるのが原則とされています。
すなわち、損害賠償額のうちの80%しか相手から支払われないこととなります。
配信: LEGAL MALL