アスベストをどのくらい吸うと病気になる?不安なときの確認事項

アスベストをどのくらい吸うと病気になる?不安なときの確認事項

3、今後の暮らしの中でアスベストを吸う可能性はどれくらい?

現在、アスベストは原則製造・使用が禁止されていますが、生活環境や仕事によっては、今後の暮らしの中でアスベストを吸ってしまう可能性はゼロではありません。

ここからは、今後の暮らしの中でアスベストを吸入するリスクがある場面について解説します。

なお、一般大気中や水道水中にも微量のアスベストが含まれていますが、健康被害を生じるものではありません。

(1)アスベストを吸う可能性が高い職種

現在、アスベストの製造・輸入・使用・譲渡・提供は全面的に禁止されているので、業務中にアスベストを吸ってしまう機会はほとんどありません。

ただし、すでに使用済みで現存しているアスベストを除去する必要性は未だに残っているため、以下の仕事に従事している人は、今後の暮らしの中でアスベストを吸う可能性があると考えられます。

アスベストの無害化・飛散防止・占有検査技術の検査等に関する試験研究の従事者
アスベスト含有建築物の解体業者
アスベスト含有物の廃棄物処理業者

(2)家庭内でアスベストを吸うケース

日本で吹き付けアスベストが禁止されたのは1975年9月なので、それ以前に建築された建物に居住している場合には、住宅・マンションなどに使用されたアスベストを吸入するおそれがあります。

また、現在市場に出回っている家電製品にはアスベストは使用されていませんが、2005年頃以前に製造販売されていた家電製品のなかには、製造過程でアスベストが使用されたものが存在します。

たとえば、冷蔵庫の圧縮機内部のパッキンや電気スタンドのジョイント部、全自動洗濯機・ルームエアコン・除湿器・掃除機などの家電製品です。

もし、現在古い家電製品を使用しているのなら、家電に付着しているアスベストを吸ってしまう可能性を否定できません(参照:「家電製品における石綿(アスベスト)の使用状況について」日立HP)。

さらに、ご家族にアスベスト暴露作業従事者がいらっしゃる場合には、作業服に付着したアスベストが家庭内にもちこまれたり、脱衣の際に石綿が付着したり、洗濯の際にアスベストが手に触れたりする危険性もあります。

(3)工場の近くに住んでいる場合

現在、廃棄物処理工場などの近くに住んでいても、アスベストを吸うリスクはないと考えられます。

なぜなら、工場は近隣住民や施設の安全性を維持する責任があるところ、工場の敷地境界の大気中アスベスト繊維濃度については厳格な基準が設定されているからです。

したがって、工場の近くに住んでいることだけをもって、今後アスベストを吸う可能性があるとは言えないでしょう。

(4)近隣で建設工事や解体工事をしている場合

近隣で建設工事・解体工事を行っている場合には、空気中に飛散したアスベストを吸ってしまう可能性があります。

たとえば、解体中の隣の建物が築古物件の場合、この建物にはアスベストが使用されている可能性があります。

解体工事中は周辺にアスベストが飛散しないように尽力されますが、石綿は目に見えない以上、100%飛散が防止されているとは限りません。

したがって、近隣の建設工事や解体工事でアスベストが空中に舞うと、風向きなどの影響で自宅に石綿が侵入したり、建設工事現場の前を通過したときに石綿を吸ってしまったりする危険性が生じます。

(5)子どもが学校に通っている場合

かつては学校施設にアスベストが使用されていましたが、有害性が認識されてからは使用されず、また、使用済の石綿の除去が進められています。

平成30年度の文部科学省の調査によると、全国の学校施設等機関(123,766機関)のうち、平成30年の段階で「石綿を含有し、劣化・損傷等がある煙突用断熱材を保有する機関(アスベストの飛散リスクがある機関)」は212機関にとどまります。これは、全体の0.171%に過ぎません。

したがって、子どもが学校に通っている場合に、学校生活のなかでアスベストを吸うリスクはかなり低いと考えられます。

もし、子どものアスベスト暴露リスクを懸念されるなら、学校等が所在する自治体までアスベストの状況についてお問い合わせください。

4、アスベストを吸った、または吸ったかもしれないと不安な人が注意すべきこと

例外的な事情が存在しない限り、今後の生活でアスベストを吸う可能性は低いです。

その一方で、これまでの生活のなかでアスベストを吸入したおそれがあるなら、これから健康的な生活を送るためにも注意して過ごす必要があるでしょう。

(1)吸い込んだアスベストは完全には排出されない

吸入されたアスベストは、通常、異物として痰のなかに混ざって排出されます。

ただし、痰として排出されることなくアスベスト繊維が肺胞内に到達してしまうと、破壊・分解されずに肺胞内にとどまり続けて、アスベスト関連疾病の発症リスクを高めます。

(2)定期的な健康診断が重要

アスベストを吸入した可能性があるなら、定期的な健康診断が不可欠です。

なぜなら、アスベスト関連疾病はある程度病気が進行するまで無症状のことが多く、仮に自覚症状があったとしても日常的な不調と混同してしまいがちだからです。

したがって、アスベスト暴露の不安を抱えていたり、息苦しさや慢性的な咳などの自覚症状があったりするのなら、定期的に胸部レントゲン検査や肺がん検診、CT検査、喀たん細胞診、気管支鏡検査を行ってもらい、健康状態の管理意識を高めるのが重要だと考えられます。

(3)こんな症状が出たら要注意!すぐに受診しよう

過去にアスベストに暴露した可能性があり、以下の症状が出たときには、かかりつけ医や内科・呼吸器科を受診しましょう。

また、各自治体の保健所でもアスベスト関連の相談に対応してくれるので、専用窓口までお問い合わせください。

日常的な息切れ、激しい動悸
咳や痰の増加、色の変化が顕著(血痰など)
顔色が悪い、爪が紫色に変色している
顔、手足のむくみが酷い
急激な体重の増加
慢性的な微熱、風症状が改善しない
寝転ぶと息苦しさを感じる
慢性的な食欲不振や体重の減少
身体のだるさが改善されない

参照:「アスベスト(石綿)に関するQ&A」厚生労働省HP

関連記事: