「もちろん、人間を成長させるためには、子どもの頃のケンカは必要だと思います。特に幼少期3歳くらいから小学校低学年くらいまでのケンカ体験は重要で、相手を攻撃したら、相手が泣いたりすることで事の重大さや相手の痛みを理解し、自分も攻撃されることで心や体の痛みを知り、加減というものがわかるようになります。そういうことを学ばないまま大きくなって、力の加減がわからないまま同じことをやってしまえば、相手にケガをさせるような事態になってしまう恐れもありますから、幼少期のうちにいろいろな経験をしておくことはとても重要です」(増田先生 以下同)
ただし、“子どもがケンカから学ぶ”ということについては、忘れてはいけない重要な対応があってこそだという。
「勘違いしてはいけないのは、“ケンカすれば学べる”ということではないんです。つまり、ケンカしっぱなしではダメということです。ケンカをしたあとに、何をわからせるか? がもっとも重要なこと。何が原因だったのか? ケンカしてどんなふうに思ったのか? どうすれば防げたのか? を、その都度しっかり子どもに考えさせることなんです。つまり、ケンカにもルールと教育が必要なのです。よく、“ウチの子はケンカっ早いんです~”と言っている親御さんがいらっしゃいますが、それは家庭で小さいときからケンカ教育がちゃんとされていないからです。勉強ができるとか、運動ができるとか、そういう教育はしっかりしているけれど、ケンカの教育は、なかなかできていないご家庭は多いのではないでしょうか」
では、ケンカを目の当たりにしたとき、大人たちはどう対応すればいいのだろうか?
「ケンカというのは、お互いの言い分のぶつかり合いですよね? だからこそ、最後まで互いが言い分を言いきることが大事。それを言いきらないうちに大人がやめさせてしまうからよくないんです。もちろん、それが暴力に発展しそうになった場合は力ずくでやめさせて、言葉だけで言い合いをとことんさせます。そして、もう言うこともなくなって興奮もおさまったところで大人が入っていく。そこで、しっかりケンカの内容について考えさせるのです。大人が見ていなかった場合も、きちんとあとで双方の言い分をきちんと聞いてやり、やはり考えさせることが何より大事です」
子どもにルールや規則を理解させるとき大事なことは、その背景をしっかり理解させることだという。
「ケンカはダメ!など、“○○はダメ!” と、建前を100回言っても子どもにはなかなか響かないうえに、また繰り返すだけです。大事なことは、○○がダメな理由、それをすることによってどんな気持ちになり、どんな結末になるのか? どんなことを引き起こすのか? ということを考えさせ、理解させることなのです。こういう経験を幼少期から積み重ねていくことで、ケンカも真正面からぶつかっていくことだけが正解ではないということを学び、うまくかわす術なども徐々に身につけていけるようになります。成長過程のトラブルこそ、子どもを成長させる貴重なチャンスなのです!」
子どもたちの成長のチャンスがしっかり未来につながるように、大人たちは子どもを見守り、導いていきたいものですね!
(構成・文/横田裕美子)