「子どもは、ケンカから多くのことを学びます。しかし、それは親御さんをはじめとした大人たちが、しっかりルールを教えることが前提になります。ケンカをするときはお互いがカッとなっているとき。だからこそ、普段から“これだけは守らなければならない!”という絶対のルールをしっかり言い聞かせ、理解させておかなければならないのです」
そう話すのは、白梅学園大学教授の増田修治先生。では、親として教えるべきルールとは?
「ひとつは、どんなにカッとなってつい手が出てしまったとしても、相手の痛いところ、大事なところ=急所を絶対に狙わない。頭や顔面、お腹、股関など。そして、人間の体は、想像以上にもろいものだということを、しっかり教えておかなければなりません。また、最近では男の子が女の子に対しても暴力をふるう事例も多く、お腹にキックしたなどという報告もあります。私は、なぜ女の子のお腹を蹴ってはいけないのか? という理由として、女の子はお腹に赤ちゃんのもととなるものを持っている…と性教育につなげて事の重大さを教えるようにしています」(増田先生 以下同)
ルールを教えるときに必ず心がけなければならないのは、なぜいけないのか? という理由や最悪の結末について話しておくことだそう。
「殴っちゃダメ! 蹴っちゃダメ! と、言うだけでは子どもは理解しません。殴ったら、どうなるのか? それが相手や自分にどんなデメリットをもたらすのか? その最悪の結末まで説明することが最大の抑止につながります」
また、ケンカと暴力の境界線はあいまいになりやすいそう。そのふたつは明確に違うということも、しっかり子どもにルールとして教えておくことが大事だと増田先生は話します。
「ケンカというのは、意見の相違など原因がちゃんとあり、かつ同等にやりあえて、双方がどこかしら冷静な部分をもっているもの。ところが、相手に憎しみの感情があったり、一方的に優勢的にどちらかが攻撃したり、殴りはじめたらそれはもう暴力です。その線引きも、しっかり大人が見極めること、子どもに教えることが大事です」
また、増田先生が、ケンカのルールとして、必ず子どもたちに最初に伝えることがあるそう。
「“相手にケガをさせるようなケンカは絶対にダメだ!”ということです。相手にケガをさせてしまった場合、どんなにその子の言い分が正しくても、僕はケガをさせられた人の味方になるからと、明確に言っています。先に相手が手を出してきても、原因はどうであれ、ケガをさせてしまえば、罪に問われるのが社会だからです。よく、相手の子をケガさせておいて、“相手から仕掛けてきたのだから、ウチの子は悪くない”という親御さんがいらっしゃいます。気持ちはもちろんわかるのですが、それは違います。社会でそれは通用しないからです。情状酌量はあったとしても、罪に問われてしまうのです。そういう現実もしっかり子どものうちに教えなければなりません」
ルールがあってこそ、ケンカから学ぶものがある。ルールがなければ、それは暴力になってしまうということをしっかり親子で認識したうえで、かけがえのない人間関係を築いていってほしいですね。
(構成・文/横田裕美子)