【実録】某俳優が“本当の夢”に至るまで…

第3回 夢の見つけ方
子どもには、生き生きと夢を追いかけてほしいものだが、できれば“確実な夢”を追いかけてほしいと願うのが親心。夢がこじれて、ニートや引きこもりになってしまうのだけは避けたいからだ。そこでここでは、紆余曲折の末に夢を叶えた親子の実録を紹介する。

●思いつきで留学を…

「息子が小学生の頃、映画『ピンポン』を見て、なぜか卒業文集に“役者になる”と書いていたんですよね。それも“竹中直人さんみたいな役者になりたい”と。でも、その後はそんなことを一言も言わず、公立中学ではサッカーに夢中になり、私たち親が勧める大学の付属高校へ。高校ではバンドをやっていましたが、当然そのまま付属の大学に進学してくれるものだとばかり思っていました。高校受験の時はおとなしく言うことを聞いてくれましたが、大学に関しては、もうまったく言うことを聞かなくなってしまって…。“今の大学には行きたくない! 留学したい”と言い出したんです」(Aさん 以下同)

そう語るのは、現在24歳の息子を持つAさん。高3の段階で“留学したい”と突然言い出したので、親は反対して大学進学を勧めたものの、本人は断固拒否。どうしても「付属の大学には行きたくない」と言い張るので、アメリカ留学は決まりかけていた。そんななか、何気なく言われた友だちの父親からの一言で、彼は我に返る。

「“そんなところに行っても、英語なんて出来るようにならないよ”と言われたみたいです。私たちの言うことは聞かなくても、第三者の大人から言われると心に響いたようで…。そんな時、息子は小学生の時の夢を思い出したんですね。“そうだ、僕は役者になりかったんだ”と。急遽、演劇学科がある日大芸術学部と多摩美術大学の受験を決め、高3の夏から猛勉強を始めました。そこからは、ものすごい頑張りを見せてくれましたが、人生そんなにうまくいくわけもなく、大学は合格しませんでした。付属の大学をもう一度勧めましたが、やはり断られました」

【実録】某俳優が“本当の夢”に至るまで…

●親が出来ることとは?

それでも役者になる夢は続き、劇団が経営するスクールに通い、舞台経験を積んで、その後はフリーの俳優に…。今は大手事務所の預かりにまでのし上がり、映画やCMに出演している。

「高校からは親が何を言ってもダメで、むしろそれとは逆方向に進むぐらい。だから親だけじゃなく、周りに誰かアドバイス出来る大人がいるといいかもしれないですね。ここまでくると、親はひたすら見守るしかありません。実は芸能関係の知り合いがいて、紹介することも出来たんですけど、息子は“それだけは嫌だ”とつっぱねました。でも、自力でここまで来れたのだから、今後も見守るだけですね(笑)」

思春期以降は親の言うことを聞かなくなる子もいるので、子どもが尊敬する“外の師匠”を作っておくといいかもしれない。大きくなって夢が叶う子は、ほんの一部にすぎない。だが、親が自分の夢を温かく見守り、応援してくれた…という背景は一生忘れないものなのだ。

(取材・文/谷亜ヒロコ)