「“負けん気が強い”“勝気である”と言えば聞こえが良いのですが、見方を変えると“自分が負けることを受け入れられない、精神的にタフでない弱い子”とも言えますね」(立石さん 以下同)
こういったタイプの子どもは、家で王様扱いされているケースがあるという。
「一番にならないと気が済まず大泣きするため、ついつい周りが子どもの思い通りになるように合わせてしまっている環境で育っている場合です」
では、なぜそのように勝ち負け、一番などにこだわってしまうのだろうか?
「なかには、生まれつきの気質として負けず嫌いの子もいますが、例えば、勝ったときは“一番になれて偉かったね”と大人が褒め、負けたときは”今度は一番になれるように頑張ろうね”と、よい行動や成功したときしか認めない、失敗を認めない子育てをしていたら、勝ち負けにこだわるようになってしまうのは当然ですね」
では、どう対処したらいいのか?
「子どもが勝てないから、一番になれないからと怒り狂って、ゲームを投げ出したりした場合は、叱ったりせず、“今、とても悔しいよね”と、悔しい気持ちは汲んでやり、続けて“よく考えてみて。あなたが勝ったとき他のお友達はどうしてるかな? あなたを讃えて拍手してくれている子もいるよね”と諭してみましょう。それでも気持ちが晴れない場合は、あえて取り合わないで、その子抜きでゲームを淡々と進めましょう。そこで周りが合わせてしまうと、思い通りになるものだと思ってますますエスカレートしてしまいます」
人生は思い通りにならないもの。どんなに頑張っても努力を積み重ねても叶わないこともある。そのことを小さいうちから経験させることがとても大切だという。
「勝つ経験ばかりすると、負けることを恐れるようになってしまいます。例えば、知力が必要なゲームばかりだと、頭がいい子がいつも勝ってしまいます。年齢差や能力差がある場合は、ハンデをつけるのもひとつの方法です。また、私がおすすめするのは、知力で勝つゲームだけでなく、運で勝負が決まる“坊主めくり”や“すごろく”などを取り入れて小さいころに負けることも経験させることです」
そして、親御さんには“どんなにわが子が劣っていようと、お友達と同じようにできなくても、あなたはあなたで価値があると、わが子を認めてあげてほしい”と、立石さんは話します。
「パーフェクトな人なんていません。“自分はパーフェクトではないけれど、それでも価値がある”と、受け入れることができる人が、本当に勇気のある人ではないでしょうか。お子さんのダメな面もいい面もすべて受け入れて、溢れる愛を注いであげてくださいね」
子どもは自分の“作品”ではありません。自分が評価を受けたいからと知らず知らずのうちに追い詰めてしまわぬよう、一人の人間としての存在価値をしっかり認めてやり、自信を持って生きていけるように見守ってあげましょう。
(構成・文/横田裕美子)