5、逮捕が誤認であることが判明したら賠償金はもらえる?
誤認逮捕されると身体拘束や不名誉な報道などの被害が考えられます。
したがって、誤認逮捕の被害を受けた場合には、以下3つの方法の救済を図ることとなります。
被疑者補償規定に基づく金銭賠償
刑事補償法に基づく金銭賠償
国家賠償法に基づく金銭賠償
(1)起訴前に釈放された場合(被疑者補償規程)
逮捕されたが起訴される前に誤認であったことが判明して、「嫌疑なし」の理由で不起訴処分が下されて釈放された場合には、被疑者補償規程に基づく金銭賠償を受けることができます(被疑者補償規程第2条参照)。
補償額は、身柄拘束を受けた日数に応じて、1日1,000円以上12,500円以下の割合で算定されます(被疑者補償規程第3条1項)。
(2)無罪判決を受けた場合(刑事補償法)
誤認逮捕後に起訴されたが、その後の刑事裁判や再審で無実が認められた場合には、刑事補償法に基づく金銭賠償を受けることができます(刑事補償法第1条)。
刑事補償法に基づく金銭賠償の内容は以下の通りです(刑事補償法第4条各項)。
身柄拘束に対する補償:1日1,000円以上12,500円以下
死刑執行に対する補償:3,000万円以内+死亡によって生じた損害額
罰金・科料に対する補償:罰金・科料として納付した金額+法定利率によって算出される利息相当額
没収に対する補償:没収物が処分されていなければ没収品の返付、既に処分されていれば時価相当額+法定利率によって算出される利息相当額
(3)誤認逮捕が違法だった場合(国家賠償法)
違法な誤認逮捕によって何らかの損害が発生した場合には、国家賠償法に基づく金銭賠償を請求できる可能性があります(国家賠償法第1条1項)。
国家賠償法に基づく損害賠償請求が認められるには、「当該誤認逮捕が捜査機関の故意過失によって行われたために損害が生じたこと」を主張・立証しなければいけません。
たとえば、自白の強要などの明らかに違法な捜査活動が原因で誤認逮捕が引き起こされた場合には、賠償が認められる可能性が高いでしょう。
これに対して、虚偽の被害届などによって誤認逮捕が引き起こされた場合には、「提出された被害届が虚偽であることを捜査機関が”逮捕前に”察知できなかったこと」について故意・過失があったと証明できなければいけません。
したがって、理屈の上では国家賠償法に基づく金銭賠償を求める余地があっても、実際に国家賠償請求訴訟が認められることはハードルが高いと考えられます。
6、誤認逮捕した警察官の処分は?クビになる?
誤認逮捕事案の状況によって、担当警察官の処分内容は変わってきます。
まず、誤認逮捕を引き起こしたことだけをもって警察官が懲戒処分を受けるわけではありません。
警察官に対する懲戒処分は、誤認逮捕に至る経緯や原因、非行の程度などが総合的に考慮されて決められるものだからです。
警察官に対する懲戒処分及び内部処分の内容は以下の通りです(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条、内規)
免職
停職
減給
戒告
訓告
本部長注意
厳重注意
所属長注意
たとえば、任意聴取の段階で対象者に暴力をふるうなどして自白を強要したような違法性の高い事例では、懲戒免職が下される可能性もあります。
これに対して、目撃者の証言を信じても仕方がなかったような事情が認められる場合には、処分が下されるとしても戒告や注意などの軽い処分となりがちです。
誤認逮捕された側にとっては腹立たしいのも当然ですが、救済は金銭賠償などの方法によるものであり、懲戒処分などを請求できる権利があるわけではありません。
配信: LEGAL MALL