子どもにNOと言える親になる!

第1回 子どもにNOと言えない親たち
雑誌で特集が組まれるなど、「ほめる育児」が話題となって久しいが、その一方で、子どもが悪いことをした時、うまく叱ることができない親が急増! 急に感情的になったり、手を出してしまったり…。だが、ただ“ダメ!”と言うだけでは子どもの心には響かないという。そこで、長年に渡り、東京・青山の「こどもの城」などで多くの親子と接してきた臨床心理士・植松紀子氏に、どうしたらうまく“NO!”と伝えられるかを聞いた。

●幼児から思春期まで使える5箇条

「今のお母さんは、嫌だと思ったらそのまま感情的にぶつけてしまいます。すると子どもは、なぜ怒られたかわからなくなってしまうんですね。“コレをやったらダメ”の“コレ”が伝わらず、嫌な感情だけが伝わります。すると8歳位で『うるさい!』と言われることになりますね」(植松氏 以下同)

そうならないために「NO!というときに必要な5箇条」を挙げてもらった。

1) 頭ごなしに言わない
2) メールで言わない
3) 遠くから「やめなさい」ではダメ
4) 体罰はダメ
5) 口調や声色を変えない

「たとえば子どもが友だちにひどいことを言ってしまった場合、『そんなことを言ってはダメでしょう』だけでは、通じない。『どうしてそんなこと言ったのか』をきちんと聞いてあげないといけません。やみくもにダメダメというだけではなく、子どもが話をできる落ち着いた状態の時に『○○な理由でダメだよ』と伝える必要があります。また最近は、思春期の子どもにメールでなんでもかんでも伝える親がいますが、子どもには嫌な感情しか伝わらない可能性がありますね」

子どもにNOと言える親になる

●体罰で解決するのはNG

「NO!ということは、その行為を辞めさせること。たとえば、公園で子どもが木に登ろうとしていたら、遠くから眺めたまま『何をやってるの!そこに登っちゃダメ!』と大声で怒鳴っても効果がありません。本当にやめさせたいなら、すぐさま子どものもとに駆け寄って『木に登ってはダメ!』と面と向かって伝えるべきです。それでもやめない時は、体を抱きかかえてでも木から降ろさせるべきでしょう」

だが、体罰はNGと植松さんは断言する。

「子どもを叩くということには賛否両論ありますが、私は“体罰は全面禁止”の立場をとっています。最初は軽く叩く程度でも、痛みはすぐに慣れて、今度はもっと強く叩かなければならなくなります。さらに叩く子育ての怖いところは、子どもに”物事の解決に暴力に勝る手段はない”という間違った考えを与えてしまうことです」

子どもが力でねじ伏せられるという概念を持ったら、友だちとのトラブルでも、真っ先に暴力を使ってしまうことになりかねないという。さらにこんなアドバイスも…。

「『怒鳴ってはいけない』『冷静に叱らなければいけない』と構えてしまうと、子どもは必ず不自然に受け止めます。ストレートに“○○してはダメ”と言った方が、子どもはいけないことだと理解しやすいし、特に幼児期は、親の止めようとする必死さが伝わる場合も多いです」

シンプルに、子どもがいけないことをしたときには、ダメ!と注意する。毎日子どもを見ていれば、ここぞというときはきっとわかるはず。5箇条を頭に置き、叱り上手なママになろう!

(取材・文/谷亜ヒロコ)

お話をうかがった人

NO!と言えない親たち
植松紀子
臨床心理士
日本大学分理学部心理学科卒業。武蔵野赤十字病院、神奈川県内の児童相談所や教育委員会指導課、「こどもの城」小児保健部を経て、現在「植松メンタルヘルス・ルーム」主宰。自治体の乳幼児検診にも携わり、多くの母親の悩みを聞いている。
日本大学分理学部心理学科卒業。武蔵野赤十字病院、神奈川県内の児童相談所や教育委員会指導課、「こどもの城」小児保健部を経て、現在「植松メンタルヘルス・ルーム」主宰。自治体の乳幼児検診にも携わり、多くの母親の悩みを聞いている。