無期懲役と終身刑の違いとは?出所の可否や受刑者の生活実態も紹介

無期懲役と終身刑の違いとは?出所の可否や受刑者の生活実態も紹介

5、法定刑に無期懲役が規定されている犯罪

法定刑に無期懲役が規定されている犯罪、つまり刑事裁判で無期懲役刑が言い渡される可能性がある犯罪には、以下のものがあります。

殺人罪(刑法199条)
強盗致死傷罪(刑法240条)
強盗・強制性交等及び同致死罪(刑法241条)
強制わいせつ等致死罪(刑法181条)
現住建造物等放火罪(刑法108条)
激発物破裂罪(刑法117条)
現住建造物等浸害罪(刑法119条)
汽車転覆等致死傷罪(刑法126条3項)
水道毒物等混入致死罪(刑法146条)
身の代金目的略取等(刑法225条の2)
通貨偽造及び行使等(刑法148条)
詔書偽造等(刑法154条)
内乱罪(刑法77条)(なお、同罪は無期懲役ではなく無期禁錮が規定されています。)
外患援助罪(刑法82条)

2001年に行われた調査では、服役中の無期懲役受刑者の罪名として、殺人罪、強盗致死傷罪、強盗・強制性交等(当時は「強姦」)及び同致死罪、現住建造物等放火罪が多くなっていました。

参考:矯正協会附属中央研究所・市原学園|無期懲役受刑者に関する研究

6、無期懲役の判決が言い渡された実際の事件

ここでは、実際に刑事裁判で無期懲役の判決が言い渡された事件をいくつかご紹介します。

(1)イギリス人女性殺害事件

2007年3月、千葉県で英会話学校の講師をしていたイギリス人女性のが、殺害された事件です。

犯人がストーカー行為をしていたことや、犯行後に美容整形をして逃走していたことなどが報道され、社会の注目を集めていました。

罪名は殺人罪・強姦致死罪・死体遺棄罪で、1審で無期懲役の判決が言い渡され、弁護人が控訴したものの棄却され、確定しています。

犯行の残虐性・悪質性などから死刑が適用される可能性もありましたが、検察官は前科がないことや犠牲者が1人のみであることなどを考慮し、無期懲役を求刑しました。そして、求刑どおり無期懲役が言い渡されたのです。

(2)ベトナム人女性殺害事件

2022年4月、大阪市内の弁当店で働いていたベトナム人女性(当時31歳)が、殺害された事件です。

被告人は被害者を自宅に誘い込み、所持金を出すように求めたが抵抗されたことから、首を絞めて殺害し、現金約2万6,000円を奪ったとのことです。

刑事裁判で被告人は「金を借りようとしただけ」「殺すつもりはなかった」などと、強盗の目的や殺意を否認しました。

しかし、裁判所は「面識のない被害者から金を貸してもらえるはずがない」「相当強い力で首を絞め続けている」ことなどから強盗殺人罪を認定し、検察官の求刑どおり無期懲役の判決を言い渡しました。

なお、被告人は控訴しており、上記判決はまだ確定していません。

(3)暴力団による市民襲撃事件

2012年から2014年にかけて、特定危険指定暴力団である工藤会のメンバーが市民襲撃など6事件で組織犯罪処罰法違反(組織的殺人未遂)の罪に問われた事件です。

この事件で、2023年1月、工藤会のナンバー3で理事長である被告人に対し、無期懲役の判決が言い渡されました。

被告人は、実行役となった組員らと共謀し、暴力団としての不正権益を維持・拡大する目的で、組織的な殺人未遂罪などを実行させたとされています。

死者は1人も出ていませんが、判決では「市民生活の安全と平穏を願う社会の意思表示に真っ向から背き、組織により踏みにじった」「反社会性、攻撃性、危険性が著しく、重大な加害行為である」などと指摘し、検察官の求刑どおり無期懲役を言い渡したのです。

なお、被告人は控訴しており、上記判決はまだ確定していません。

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