養育費の不払いで強制執行された!止める方法と減額する方法も紹介

養育費の不払いで強制執行された!止める方法と減額する方法も紹介

養育費の不払いで強制執行に関するQ&A

Q1.養育費の不払いで強制執行されるケース

強制執行とは、債権者の申し立てにより裁判所が債務者の財産を差し押さえて、その中から強制的に債権を回収することが認められる法的手続きのことです。

養育費については、子どもの親権者である元配偶者が債権者、非親権者であるあなたが債務者となります。

ただし、強制執行をするためには、債務名義が必要です。債務名義とは、法的に確定した債権・債務の存在と範囲が記載された公的書類のことです。

養育費については、公正証書および家庭裁判所で養育費を取り決めた際の書類が債務名義となります。

①公正証書を作成していた

離婚する際に夫婦間で養育費の支払い取り決め、離婚協議書に記載したとしても、それだけでは債務名義にはなりません。離婚協議書は私文書だからです。

しかし、離婚協議書を公正証書で作成し、強制執行認諾文言が付されている場合は、その公正証書が債務名義となります。

②家庭裁判所で養育費を取り決めていた

家庭裁判所の手続きで養育費を取り決めた場合にも、債務名義が発行されます。家庭裁判所が発行する債務名義には、次の3種類のものがあります。

離婚調停が成立した場合の「調停調書」
離婚訴訟で和解が成立した場合の「和解調書」
離婚訴訟で相手が勝訴した場合の「判決書」

調停調書と和解調書が発行された場合、親権者はすぐにでも強制執行が可能です。

判決書の場合は、非親権者が受け取ってから2週間以内に控訴しなければ判決確定となり、その後に強制執行が可能となります。

Q2.給料の差し押さえは当面続く可能性がある

給料を差し押さえられた場合は、まず、未払い分を完済するまで差し押さえが続きます。

例えば、月5万円の養育費を10ヶ月払わず、50万円の未払いがあるとしましょう。あなたの手取り月収は40万円だとします。

給料差し押さえの上限額は手取り月収の4分の1(手取り月収が44万円を超える場合は、33万円を除いた全額)なので、1ヶ月の給料から差し引かれる金額は10万円です。未払いの50万円を完済するまでの5ヶ月間、差し押さえが続きます。

しかし、養育費を不払いにした場合には、将来に受け取る予定の給料にも強制執行の効力を及ぼすことが可能とされている(民事執行法第151条の2第1項3号)ので、その後も差し押さえが続く可能性があります。

つまり、未払い分を完済した後も、毎月の養育費を任意に支払わなければ、1ヶ月ごとに給料から強制的に回収されるのです(同条2項)。

Q3.養育費の強制執行を止めるためにやるべきこと

養育費の強制執行を止めるためには、以下のような対処が必要となります。

①未払い分を完済する

最も確実な方法は、未払い分を支払ってしまうことです。

未払い分を完済し、その後も取り決めの内容どおりに養育費を支払うのであれば、給料が差し押さえられることはなくなります。

強制執行の原因となった未払い債務は、法律上の支払い義務が確定したものです。できる限り早めに完済した方が得策です。

②相手と話し合う

すぐに未払いを解消できない場合には、相手と話し合って強制執行の申し立てを取り下げてもらう必要があります。

ただ、相手も手間とコストをかけて強制執行を申し立てているのですから、単に「取り下げてほしい」と要望したところで簡単に応じてもらえるものではありません。

まずは、これまでの不払いについて謝罪をすることが大切です。

その上で、給料差し押さえが続くと職場にいづらくなり、退職に追い込まれるおそれがあること、そうなると養育費の支払いがなおさら厳しくなることなどを具体的に説明する必要があるでしょう

③養育費減額請求調停を申し立てる

以前に取り決めた養育費の金額では支払いが難しい場合で、相手との話し合いがスムーズに進まないときには、養育費減額請求調停を申し立てるという方法があります。

家庭裁判所で調停委員を交えて話し合うことで、妥当な金額にまで減額してもらえる可能性があります。

調停を成立させるためには、現在の生活状況や経済状況を具体的に伝えて、調停委員を味方につけることがポイントです。

そうすれば、調停委員が相手に対して助言や説得を交えて、合意を促してくれることが期待できます。

調停がまとまらない場合には審判手続きに移行し、裁判所が妥当な養育費の金額を決めます。

調停または審判で養育費の減額が認められた後は、その金額を滞りなく払っていけば、給料を差し押さえられることはなくなります。

ただし、調停を申し立ててから解決に至るまでには少なくとも数ヶ月はかかります。

半年以上の期間を要することも少なくありません。その間、給料差し押さえが止まらないことは覚悟しておく必要があります。

いったん強制執行をされると、途中で止めることは極めて難しいのが実情です。

今後は、強制執行をされる前に、相手との話し合いや調停などによって早めの解決を心がけましょう。

まとめ

養育費を支払いたくない、支払いが厳しい、といった事情があるとしても、支払わずに放置すると強制執行により給料や預貯金を差し押さえられてしまいます。

あなたに収入や財産がある限り、子どものための養育費の支払いから免れることはできません。しかし、養育費には収入に応じた相場がありますので、過大な金額を支払う必要もありません。

養育費の不払いで強制執行をされてしまった、あるいは強制執行をされそうな状況にある方は、早めに弁護士へご相談ください。最善の解決策を弁護士と一緒に考えていきましょう。

監修者:萩原 達也弁護士

ベリーベスト法律事務所、代表弁護士の萩原 達也です。
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