今さら聞けない「LGBT」のギモン

第1回 LGBTと多様な性、子どもにどう教える?
「エルジービーティーってなに?」と子どもに聞かれたら、あなたはちゃんと答えられるだろうか?

「テレビに出てくるオネエとかオカマのこと」という回答は不正確。「世の中にはそういう人たちもいる」とお茶を濁すのも不誠実だし、子どもは納得できないだろう。

子に「LGBT」を説明するにはどうしたら? 『先生と親のためのLGBTガイド』の著者であり、LGBTの子ども・若者支援に長年関わっている遠藤まめたさんに話を聞いた。

●4歳の子にも伝わる言葉でLGBTを説明する

「LGBTとはレズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の4つの言葉の頭文字を並べた略称です。この4タイプに属する人々に共通の社会的問題が多いことから、多様な性を表す言葉として広く使われるようになりました」(遠藤さん 以下同)

では、それぞれの“タイプ”について、4~5歳の幼児でもわかるようなやさしい言葉で伝えるにはどう表現すればいいだろう? まずはレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの3つについて教えてもらった。

「レズビアンは女の子を好きになる女の子、ゲイは男の子を好きになる男の子、バイセクシュアルは男女どちらも好きになることができる子、と言うことができるでしょう。生まれつきなのか、それとも後天的な要因で決まるのかといったことは、科学的にまだ解明されていません」

現在、子育て中の保護者の多くは「異性を恋愛・性愛の対象とし、結婚して子どもをもうけた」人たちだろう。これら異性愛者の人々と比べると、レズビアンやゲイ、バイセクシュアルの人たちは数が少ないため「セクシャル・マイノリティ(性的少数者)」と称されている。

ではトランスジェンダーとは? 性(ジェンダー)を超える(トランス)とはどういう意味だろう?

「トランスジェンダーは自分の体と心の性にしっくりこない人の総称です。体の性(生物学的な性)は男の子でも、『男らしく振る舞うことになじめない』『自分の本当の性は女の子だと思う』『女の子として扱われるほうがしっくりくる』といった“性別違和”を感じる人々を指します」

性別違和は当人にしかわからない複雑な問題でもある。もしわが子が「女の子っぽい男の子」「男の子っぽい女の子」をからかうような発言をしていたら、「性別を理由に人を変だと言うのは、嫌な思いをさせることもあるから気をつけようね」と親としてさりげなく伝えていこう。

手を合わせているところ

●「LGBT」と「多数派」のあいだに明確な境界はない

このように、ひと口にLGBT、セクシュアル・マイノリティといってもさまざまなタイプがある。だが何よりも大切なのは、「LGBT」と「そうでない多数派(マジョリティ)」の間にはっきりとした境界線があるわけではない、という事実だ。

「マジョリティの人たちにだって多様性がありますよね。宝塚の男役が好きな女性は珍しくないし、男性だって体育会系から文化系までいろいろいる。恋愛の形も年の差カップルもいれば国際結婚もいる。マイノリティと呼ばれる人たちだけが多様なのではなくて、マジョリティと呼ばれる人も自分もまた多様性の一部なのだと気が付くことが、“多様性の理解”の一歩だと思います」

「性の多様性」をLGBTだけの問題と切り分けるのではなく、異性と子をもうけて親になった私たち自身もまた、「多様な性」のひとつのタイプにすぎないという事実を意識しておこう。
(阿部花恵+ノオト)

お話をお聞きした人

遠藤まめた
遠藤まめた
1987年生まれ横浜育ち。トランスジェンダー当としての自らの体験をきっかけに10代後半よりLGBTの若者支援をテーマに活動。著書に『先生と親のためのLGBTガイド もしあなたがカミングアウトされたなら』(合同出版、2016年)ほか。
1987年生まれ横浜育ち。トランスジェンダー当としての自らの体験をきっかけに10代後半よりLGBTの若者支援をテーマに活動。著書に『先生と親のためのLGBTガイド もしあなたがカミングアウトされたなら』(合同出版、2016年)ほか。