さらに、心配なのは、母親の溺愛によって息子がダメ男になりそうなこと。溺愛ママがついやってしまいがちなNG行動について、『子どもの心のコーチング』(PHP研究所)著者で、NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事の菅原裕子さんは言う。
「溺愛ママは、息子をかわいがるがあまり、欲しいものを何でも与え、ダメなことをダメと言わずに育ててしまう傾向があります。そして、『息子に苦労させたくない』と思い、トラブルがないよう先回りして露払いして歩いてしまうのです」(菅原さん 以下同)
実は同じ親に育てられても、女の子はしっかり者になるのに、男の子だけがダメになる家庭は多々あるそう。また、入社して1カ月も経たずに会社を辞めるのも、男が多いという。
「すぐに会社をやめた人たちの理由を人事担当者に聞くと、必ず出てくる彼らの言葉は『この仕事は僕には合わない』というものです。まだ本当の仕事もしていない段階でそんなことを言うのは、『仕事が合わない』のではなく、『環境が合わない』だけ。親が先々で露払いしてくれる環境で生きてきたから、自己中心的になり、世の中にあわせて生きることを学んでいないのです」
●今の現実と理想をつないでいくことが必要
親にとっては、いつまでも幼くかわいく、放っておけない男の子。でも、ただかわいがるのは、愛玩動物と同じだと、菅原さんは話す。
「溺れるほどの愛情は、子どもの能力をつぶしてしまいます。『子育て』は、子どもを幸せに自立させることなのですから」
わが子が成人になったとき、どんな生活をしていてほしいか、どんな人になっていてほしいかという理想像を持っている人もいるだろう。
「ただ、今の現実と理想の間をつないでいかなければいけないのに、それをしていないのです」
中高生、あるいはギリギリ大学生くらいまでは、「頼りなくてかわいい息子」でも良いかもしれない。でも、そのまま30代、40代になったら?
「息子がかわいい」「息子に苦労させたくない」と思うからこそ、ときには厳しく、その子が自立して人生を歩んでいけるよう遠い将来の姿を想像してみることも必要かも。
(田幸和歌子+ノオト)