新機種が出るたび、進化を続けるスマホカメラ。画像加工アプリの充実もあり、誰もがカジュアルに写真ライフを楽しんでいる。しかし、その気軽さゆえ、撮ってはいけないものを撮ってトラブルに発展しまう可能性も。難しいのは、「撮ってはいけない」線引きだ。
異性のセクシャルな姿を盗撮するなどの行為は言語道断だが、たとえば、「後ろ姿」などはどうなのか? スマホ撮影のNGラインと法的リスクについて、アディーレ法律事務所に聞いた。
着衣の上からの撮影でも、条例違反の可能性
「どこがボーダーラインかは、各都道府県の条例によって異なります。たとえば、東京都の場合、『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例』があります。これの第5条1項2号に『公共の場所もしくは公共の乗り物において、通常、衣服で隠れている下着、または身体を写真機あるいはその他の機器を用いて撮影し、または撮影する目的で写真機を差し向け、もしくは設置すること』が禁止されています」(吉岡一誠弁護士、以下同)
この条例では、着衣の上から撮影しただけでも罰せられる可能性があるようだ。
「第5条1項3号には、『卑わいな言動をすること』が処罰の対象になる旨が定められています。過去には実際に、ズボンを着用した女性のお尻を5分ほど、40mにわたって追跡し撮影した男が逮捕されるという事件もありました。このケースでは、“人に対して卑わいな言動をした(第5条1項3号)”として、同条例が適用されています」
また、刑事罰の対象にならなかったとしても、無断撮影には民事上の法的リスクが伴う。
「『肖像権』の問題です。これは“自分の容貌をみだりに撮影され、それを公表されない権利”ですので、撮影した画像をSNSにアップすることはもちろん、他者の容貌を撮影するだけでも損害賠償責任を負うリスクがあります」
SNSへの写真投稿で「肖像権侵害」「プライバシー侵害」の可能性も
では、風景を撮影した画像をSNSにアップしたとして、盗撮の意識はなく、そこに“たまたま写り込んだ人”がいた場合はどうなるのか?
「故意でなければ犯罪行為には該当しませんが、写り込んだ人から画像の削除を求められる、損害賠償請求をされるリスクはあります。SNSにアップするなら、写り込んでいる無関係の人物全員の顔にモザイク処理を入れるなどの加工をおすすめします。人物を特定できない状態にすることで、肖像権侵害のリスクを避けることができます」
このほか、仲間同士の飲み会写真なども、写り込んでいる本人の許可なしにSNSに上げてしまうとトラブルに発展する可能性がある。参加者の中には、会社や家族に隠して来た人もいるかもしれない。そうした不都合な事実がSNSによって明らかになった場合、「プライバシー侵害」にあたる可能性があるという。
「肖像権侵害」「プライバシー侵害」とも、ケースバイケースだが数万円~数十万円程度の慰謝料を支払わなければならない可能性があるようだ。
ともあれ、法的リスクを抜きにしても、写真絡みのトラブルは社会的信用の失墜、友人との信頼関係の崩壊につながりやすい。手軽で便利だからこそ、その扱いには十分に注意したいところだ。
(小野洋平/やじろべえ)
【取材協力・関連リンク】