日常生活に欠かせないスマホだが、扱い方を間違えると「事件」に発展してしまうこともある。特に気を付けたいのが、知らず知らずのうちに「犯罪行為」に手を染めてしまうこと。そこで、日常的なスマホの利用が犯罪につながってしまう可能性について、アディーレ法律事務所に聞いた。
今回うかがったのは「スマホにまつわるプライバシー」について。たとえば「妻(夫)や彼女(彼氏)など、パートナーのスマホを無断で見た」場合、何らかの犯罪にあたるケースはあるのだろうか?
メール盗み見は、犯罪にはならないが…
「スマホの中のデータを勝手に見ることは、犯罪には該当しません。メールを盗み見る行為に似た罪として『信書開封罪』というものが一応はあるのですが、こちらは手紙を本人に無断で開封した場合に成立するもの。あくまで紙の文書に限ってのものであり、電子メールやLINEのメッセージを見るだけならば犯罪ではありません」(吉岡一誠弁護士、以下同)
とはいえ、決して褒められた行為でないことは確か。吉岡弁護士によれば、刑事罰を負うことはないが、民事上の法的リスクが伴うという。
「民法709条の『不法行為』にあたる可能性があります。他人に公開されたくない、知られたくない情報を勝手に見てしまう行為はプライバシーの侵害になりうるので損害賠償請求をされる恐れがあるのです。なお、裁判の中でプライバシーの侵害に該当するか否かは、(スマホを盗み見た側が)得られる利益と(見られた側が)失う利益の双方を比較して、不法行為にあたるかどうかを判断します。たとえば、相手に不倫の疑いがある場合に『証拠をつかむ』という利益のためにスマホを見る行為であれば、盗み見た側の正当性が考慮される可能性があります。実際に、盗み見た『LINE』のやりとりが不倫の証拠となった例もあります」
つまり、「疑わしい相手の証拠をつかむため」であれば、無断で確認する行為も認められる可能性があるということのようだ。
スマホ盗み見訴訟は、コスパが悪い?
では、もし、スマホを盗み見たものの実際には不倫をしていなかった場合はどうなるのか?
「不利な状況になるかは、『疑いの程度』がどれくらい強いかによりますね。無断外泊など特に疑わしい行動があるわけではないのに、被害妄想で盗み見てしまった場合はプライバシー侵害が成立する可能性があります。ただ、こうしたケースのプライバシー侵害の損害賠償額は、ケースバイケースではありますが数十万程度の範囲と、かなり少額になることも多いでしょう。弁護士を雇って訴訟を起こす手間やコストを考えると、裁判にまで発展する可能性は低いかと思います」
とはいえ、訴えられずともパートナーの信用を失うことは必至。仮に不倫の疑いがある場合でも、相手のスマホに手を伸ばすことは避けるべきなのかもしれない。
(小野洋平/やじろべえ)
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